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エンジニア育成のために「Scrum」を採用、スピードと品質にこだわるRLSの開発スタイルとは

私たちの日常生活に深く根付いたコンテンツサービスを数多く展開するリクルートライフスタイル(RLS)。同社は近年、従来からの強みである圧倒的な顧客基盤とコンテンツ力をベースとした、新たなネットサービス事業の拡大にも力を注いでいる。タブレットを含めた多デバイスで動作し、中小規模の小売店舗や飲食店などで利用できる無料のPOSレジアプリ「Airレジ」を中心とする業務アプリケーション群や、2014年9月にリリースしたキュレーションメディア「ギャザリー」といったサービスがそれだ。

これらのサービスは、リリースから短いサイクルで機能やシステムの改善を繰り返し、急速に規模を拡大してきた。こうしたことが可能だった背景には、サービス企画そのものに深く関わりながら、システム開発と運用を行っているエンジニアたちの働きがある。彼らは、RLSという企業の中で、どのようにサービスを作り上げているのだろうか。

今回、Airに関連するプロダクトの開発に関わる、ネットビジネス本部ディベロップメントデザインユニット、プラットフォーム開発グループ、グループマネジャーの友永隆之氏(写真左)と、「ギャザリー」の開発を担当した同アーキテクト2グループ、グループマネジャーの小川健太郎氏(写真右)に、同社でのサービス開発の進め方や、今後求められるエンジニア像について話を聞いた。

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一時は諦めかけた「Scrum」を根付くまで実践したAirレジのチームビルディング

Airレジの開発推進を担当する友永氏は、同社がAirレジを展開する理由について「RLSが持っていた圧倒的な顧客接点を基盤として、これまで以上に顧客の業務を支援していくことを考えた結果生まれたサービス。とことん、顧客視点にならなければ作ることができなかったと思います」と話す。

Airレジでは、サービス開発にあたって「Scrum」をメインとした開発手法を採用している。それは、「企画」「開発」「UXデザイン」「営業」「QA(品質管理)」など、多くの役割を持った関係者が、共通の目標とスピード感を持ってプロダクト開発にあたるために、最適と考えたためだ。 「私だけでなく、会社にとっても、POSレジのシステムをインターネット上でサービスとして提供するというのは初めての試みでした。ですから、どのようなやり方が正解かは分からなかったです。サービスをリリースして、使ってもらい、要望を元に改修する。品質を担保しながら、このサイクルをスピーディーに回していくためには、Scrumの手法が合っているだろうと思っていました」(友永氏)

とはいえ、Scrumによる体制が最初からスムーズに導入できたわけではない。当初は、Scrumマスター、プロダクトオーナー、プロデューサーなどの役割分担がうまくいかず、「正直なところ、導入を諦めかけたこともある」という。

それでも、定着するまで実践を続けられたのは、エンジニアの育成に対して高い効果があると確信していたためだ。

「Scrumを効果的に回すためには、それぞれの担当者が『自発的』に動く必要があります。そのため、特に新しい人が入ってきて教育を行う場合、自発性が高い人材を育成するのにScrumという方法論は効果が高いと考えています。当初は苦労しましたが、Scrumの経験者がチームに加わって教育を行い、チームメンバーみんながその本質を理解し始めてからは、うまく回るようになりました」(友永氏)

Airレジでは、クライアント側の環境としてAndroidおよびiOSのネイティブアプリケーション、サーバー側の環境としてJavaを採用している。iOS向けアプリの開発言語については、従来のObjective-Cから、徐々に近年注目を集めているSwiftへの移行を始めている段階だ。Javaに関しては、最新のJava 8への移行を進めながら、基本的にはSpring Framework 4.x系の上にライブラリを作って運用していくことを推進している。

ただ、開発にあたって最も苦労をし、「いまだに『正解』が見えていない」と友永氏が語るのが、「POSレジ」というシステムにおいて、インターネット上でどのようにサービスレベルを確保するかというアーキテクチャ上の課題だ。

「タブレットとインターネットを使ったレジサービスで一番難しいのは、端末が常にネットワークにつながっているとは限らないという点です。ユーザーの中には、ビルの地下など、電波が弱いところで店舗を開いている人もいます。そうした状況の中で、どのように全体でのサービス稼働率を上げていけるか、より良い方法を常に考え続けています」(友永氏)

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「品質」と柔軟性を高めるためのギャザリーのアーキテクチャとは

一方、小川氏が開発を担当した「ギャザリー」(現在、開発リーダーは後任に引き継いでいる)は2014年の秋にスタートした。いわゆる「キュレーションメディア」「まとめサービス」としては、かなり後発ということになる。そうした状況の中でサービスを作っていくにあたり、最も大切にしたのは「サービスとしての品質を高める」ことだったという。

「競合が多くある中で、あえてユーザーにギャザリーを使ってもらうためには、サービス品質が高いことが重要だと考えました。コンテンツの質も重要な武器のひとつですが、それだけでなく、落ちないこと、レスポンスが早いこと、UIが使いやすことなど、サイトとしての品質も最高のものを目指して開発を行いました」(小川氏)

特に、UIについては頻繁に「テスト」と「改修」を繰り返しながら使い勝手を高めていくことを、当初から念頭に置いていた。そのため、フロントエンドの改善や機能追加を柔軟に行えるアーキテクチャを選択する必要があったという。検討の結果、フロントエンドとバックエンドをシステムとして分 離するアーキテクチャを選択した。フロントエンドの言語はRuby(Padrino)を、バックエンドのAPIサーバーにはJava(自社Framework)を採用した。

フロント側は極力シンプルにして、修正を頻繁に行えるような仕組みを実現しようと考えました。サイト全体のアーキテクチャとのバランスを考えて、1年前の段階でベストだと思った技術を採用しています」(小川氏)

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これからの時代に求められる「エンジニア」の姿

「Airレジ」の開発推進を担当する友永氏は、国内の大手WEBサービス企業で国内、海外のEC事業に関する開発運営に携わった後、「よりビジネス視点を持ったエンジニアでありたい」との思いから、2011年に当時ネット領域の事業拡大を目指していたRLSに入社を決めた。

一方、「ギャザリー」を開発した小川氏がRLSに入社したのは2012年。それまでは、受託開発を行うソフトウェアベンダーにエンジニアとして勤務していた。転職のきっかけは「よりプロダクトにエンジニアリングの意思を反映できる事業会社で開発に関わりたかった」ためだという。

両者とも、「ビジネス視点を持ったエンジニアになりたい」「プロダクトの価値をエンジニアとしての立場で高められる場所で働きたい」という、それぞれの思いを持って同社に参加した。現在は「Airレジ」と「ギャザリー」の開発において中核的な役割を担っている両氏に、RLSが目指す組織像とその中でエンジニアが担うべき役割について聞いた。

友永氏は、今後のRLSでは「エンジニアドリブンな組織づくり」を目指したいという。そのためには、「新しいものを生みだす」ことと「過去の技術的負債の解消」を同時に視野に入れて日々の業務に臨む視点が重要だとする。

「サービスを作ってリリースした後、長期間運営を続けていれば、どうしても技術的な負債というのは溜まってきてしまいます。この負債をどう返済していくかの文化も根付かせていかなければならないと考えています。『新しい物を作り出す』ことと、『技術的負債を解消する』こと、そしてより大きな視点で『変えていかなければならない』こと。技術的な裏付けをベースにそれらを実行したり、提案したりできるのはエンジニアだけなんです。KPIも大事ですが、より中長期的な視野で、技術的な知見に基づいた提案がエンジニア発信でできるような組織が、エンジニアドリブンな、強い組織なのだと思います」(友永氏)

小川氏は、友永氏の言う「エンジニアドリブンな組織」におけるエンジニアの役割について「プロダクトをよくするために、エンジニアリング能力を発揮すること」ではないかと話す。

「エンジニアにとってはコードを書く技術も重要ですが、自ら課題を発見して、その時点で最もふさわしい技術を取り入れて解決していける能力により大きく期待されています。その過程を通じて、自分たちも進化していける集団が理想的ではないでしょうか」(小川氏)

「こんなサービスを作りたい」というアイデアを、技術を通じて形にし、より良いサービスへと育てていく。成長を続けるRLSの「Airレジ」や「ギャザリー」といったサービスは、こうした強い思いを持ったエンジニアたちによって支えられている。サービスの拡大に加え、技術を武器に幅広くビジネスを展開する「エンジニアドリブン」な組織づくりに向けた彼らのチャレンジは、これからも続いていく。

取材・執筆:高橋美津

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