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インテリア写真共有サービス「RoomClip」、その根底に流れる「ユーザーファースト」とは?

インテリア写真共有サイトの「RoomClip」を開発・運営するTunnel株式会社。「日常の創造性を応援する」をミッションに掲げる同社の根底には、「ユーザーファースト」に基づくプロダクトマインドがある。同社設立の経緯や開発へのこだわりについて、CEO の高重 正彦氏(写真中央)、プロダクト Dept.マネージャーの高橋 弘氏(写真右)、テクノロジーDept.マネージャーの平山 知宏氏(写真左)の三氏にお話を伺った。

自分史が詰まった場所-部屋を記録できるサービスを

RoomClip はインテリア専門の写真共有サービスだ。多くの写真共有サービスが存在する中でインテリアに的を絞ったのはなぜだろうか。

「私は福島県いわき市の出身なのですが、3.11の震災の影響で半年後に実家を引き払うことになったのです。東京で暮らしていた自分にとっても、生まれ育った家、自分が過ごした部屋がなくなるということに強い喪失感を覚えました。多くの人にとって、部屋とは、自分なりの工夫やこだわりがあり、自分の思い出が詰まっている場所だと思うのです。そうした自分史を記録しておけたら、というのが RoomClip を始めたきっかけです。

人間の生活の基本は『衣食住』と表現されますが、インターネット上のサービスを見回してみると、ファッションアイテムの写真を共有したり、レシピを共有したりと『衣食』については何らかのサービスがあり、多くのユーザーが利用していました。ところが、『住』についてはこれといったものがない。大きなチャンスがあると感じました。

それに『お部屋の写真』というと対象が限定されているように思われるかもしれませんが、決してそうではありません。車や服を除けば、自分の持ち物はたいてい部屋の中にあるわけで、部屋は自分のライフスタイルが濃縮されている場所なのです。このことは、市場の大きさにもつながります。Tunnel では、事業者向けに広告や写真提供、誘導などのサービスを提供していますが、部屋にはたいていのものがありますから、家具、家電、住宅設備、住宅メーカー、ペット用品などなど、幅広い業界を対象にできるわけです。

事業者から見た場合、RoomClip はモノの使われ方をリサーチするマーケティング・プレースとしても機能します。
例えば、ある投稿写真では北欧風インテリアでまとめたお部屋に、色の淡い子ども用滑り台が置かれていました。おそらく、その滑り台のメーカーに『北欧風』という認識はなく、単にカラーバリエーションの中の1つでしかなかったと思います。キッチン用品がクローゼットの収納で使われるなど、モノは作り手が思いもよらなかった使われ方をすることがあります。Tunnel では『日常の創造性を応援する』ことをミッションとして掲げていますが、RoomClip には商品開発や新しい使い方提案のヒントがたくさん詰まっているのです。」(高重氏)

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ユーザーが教えてくれた「ユーザーファースト」

2012年5月にサービスを開始した RoomClip だが、ユーザーの獲得とコミュニティ形成にはかなり苦労したという。

「サービス開始から1年くらいは、ユーザーが増えない、ユーザーが投稿してもなかなかコメントが付かないという状況が続きました。集客がまずかったというのもありますが、試行錯誤してもそれがなかなか結果につながらない。そこで行ったのがユーザーへのインタビューです。RoomClip を使ってくれているユーザーさんに直接お会いして、使いにくいところやこんな機能があったら、という要望をヒアリングすることにしたのです。

会って話を聞いてみると、改善できるところが多くあることに気付かされました。そして、そうした声に応えて一つずつ改善を図ると、それがきちんと結果に結びついてきたのです。もともと、テクノロジーマインドよりもプロダクトマインドが強かった私たちですが、本当に使いやすい、使っていて気持ちいいとはどういうことなのかを教えてくれたのはユーザーの声だったのです。」(高重氏)

「例えば、UI を変更したらユーザー登録数の伸びが鈍化したことがありました。結論から言うと、その原因はユーザー登録ボタンよりもログインボタンのほうが目立つようになっていたことでした。ほんの少しの変更でしたが、ユーザーは敏感に反応します。この変更はユーザーの喜びに繋がるかどうか、常にユーザー視点で物事を考えるようになりました。」(高橋氏)

ネイティブ開発へのこだわりとレスポンスの追求

RoomClip は Webブラウザでも利用できるが、利用の中心はスマホアプリだ。サービスインと同時に iOSアプリをリリースし、約1年後に Android にも対応した。

「アプリ開発でも根底にあるのはユーザーファーストの考え方です。使っていて気持ちいいと感じてもらえることが最優先。現在は iOSアプリと Androidアプリを提供していますが、操作感を優先してネイティブ開発でアプリを作成しています。
実は、PhoneGap のようなハイブリッド開発フレームワークもいくつか試してみたのですが、どうしても操作に違和感が生じてしまう。将来的にはハイブリッドでも大丈夫になるかもしれませんが、つっかかりがなくぬるぬる動くようにするには、今はネイティブ開発がベストだと考えています。

また、ネイティブ開発でも WebView を使ってしまうと開発は楽になりますが、画面遷移の仕方や表示のタイミングがアプリらしくなくなってしまいがちです。ですから、WebView は極力排除するようにしています。」(高橋氏)

ユーザーファーストの考えは、サーバーサイドの開発にも浸透している。

「サーバーサイドでは、AWS、Ubuntu、Apache、PHP といったごく一般的なインフラ、コンポーネントを使っています。開発当初は便利なツールを知らなかったせいで、無駄にスクラッチ開発した部分が多かったですね。サーバーサイドは裏方ですから、どんな技術を使っていようが必要な機能がきちんと動いていればいい。採用技術についてのこだわりは特にありませんでした。

ところが、会員数が1万人を超えたあたりでクエリが重くなり始めたんです。そうなるとアプリの操作感も損なわれてしまいますから、ボトルネックを探してそこを書き直す、リファクタリングの繰り返しです。スクラッチ開発した部分を汎用ライブラリに置き換えたりもしました。

もっとも、ライブラリやフレームワークを使うと開発効率は良くなりますが、そのまま使うと性能が出なかったり挙動に制約が出てきたりすることがある。そういうときは、中のコードを読んでカスタマイズすることもあります。カスタマイズでカバーできなければ、採用をあきらめてスクラッチに戻し、地道に改善を図ることもある。ユーザーが気持よく使えることが最優先ですから、そのためにできることなら何でもします。」(平山氏)

蓄積されたデータベースの活用に向けて

現在、RoomClip では、蓄積されたデータベースの活用を促進するために、画像解析と検索機能の強化に取り組んでいるという。それを端的に表すキーワードが「男前インテリア」だ。

「『男前インテリア』は、ある女性ユーザーが投稿した写真に付けられた『男前だね』というコメントから生まれた言葉。RoomClip 発祥の言葉ですが、今ではほかのメディアでも使われるようになっています。ですが、自然発生した言葉ですから、どんなインテリアが『男前』かという定義はない。集合知のようなものですね。」(高重氏)

「そこで試しに男前インテリアかどうかを自動判別する機能を実装してみたのです。男前インテリアとされた写真群を画像解析して、そのパターンにマッチするかどうかを自動判定するわけです。」(平山氏)

「この自動判別は1例ですが、画像解析とそれに連動した検索機能には非常に大きな価値があります。例えば、写真に写っている商品が自動認識できればタグ付けの手間がなくなり、タグに頼らずに検索できるようになる。もちろん、事業者向けサービスを開発するうえでも大きな武器になります。」(高重氏)

「画像解析や検索技術ももちろんですが、データベースの下回りも強化したいですね。今のところ性能面に問題はありませんが、会員数が二桁くらい大きくなると、現在の延長では耐えられなくなると思います。分散処理に長けたエンジニアが必要です。」(平山氏)

「アプリ開発では、よりよいユーザー体験が提供できるなら、既存資産の継承にこだわるつもりはありません。アプリのアーキテクチャーから変えてしまってもかまわない。ベストな方法をゼロベースで考えられる人に参加してもらえるといいですね」(高橋氏)

「ITは進化のスピードが速いですから、採用技術はどんどん変わっていくでしょう。でも、どんな技術を採用するにしても、その根底にあるのはユーザーファーストです。この考えに共感してくれる人と一緒に仕事ができると嬉しいですね」(高重氏)

執筆:森英幸

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