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アクティビティ予約の Voyagin、2020年に向けた成長戦略とは

旅行者へのアクティビティ予約「Voyagin」を提供する株式会社Voyagin(以下、Voyagin)。2015年7月に楽天に買収されてから約半年。楽天グループに入ったことで、どんな変化があったのだろうか。同社の生い立ちから買収の背景、今後の方策までを代表取締役CEO の高橋 理志氏(写真右)と CTO の林 寛之氏(写真左)に伺った。

あったらいいな、を実現したい

Voyagin が提供するアクティビティ予約というサービスは、高橋氏が自身の体験から思いついたビジネスだ。

「私は学生時代に世界各地を旅していたのですが、最初はツアーだったのが、旅慣れてくると個人で計画を立てて回るようになり、最終的には旅先で出会った現地の人と行動したりするようになりました。こうすると、ガイドブックなどには載っていない、とてもコアな体験ができるんです。ただし、万人におすすめできる方法ではありません。旅先でそう都合よく気の合う人と巡り合えるとは限りませんから時間を無駄にすることも多いですし、セキュリティ上のリスクもあります。 そこで、アクティビティの情報を旅行者が共有でき、予約までできるサービスがあったらいいな、と。そうした極めて個人的な欲求からスタートしました。これがビジネスとして成立するかどうか、どれくらいのビジネス規模が見込めるかということはあまり考えませんでした。自分で欲しいものを作ろうというわけです。」(高橋氏)

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リリース直後にリプレースを断行

2011年8月に Voyagin の前身となる FindJPN(ファインドジャパン)サービスを開始する。もっともサービス・リリースにこぎつけるまでには一苦労があったという。会社設立時からのメンバーである CTO の林氏は次のように振り返る。

「会社設立の時点では、すでに高橋が学生バイトを動員して開発を進めていたものがありました。開発には PHP を使っていたのですが、開発効率の面で不満があった。別のものに乗り換えたいが、それをするとサービスのリリースがさらに伸びてしまう。そこで、PHPベースで必要最小限の機能を実装してサービスをリリースして時間を稼ぎ、その後まったく新しいシステムへの移行を図ることにしました。乗り換え先として選んだのが Rails。サービスを開始してから約3ヶ月後に Rails で作り直したものに乗り換えました。」(林氏)

林氏は、金融大手のゴールドマン・サックス出身のエンジニアだ。ゴールドマン・サックス時代に学んだ開発手法は、現在の Voyagin における開発でも土台になっているという。

「金融業界の ITシステムというと、とにかく安全第一、石橋を叩いて渡るという保守的なイメージがありますが、ゴールドマン・サックスはそうしたイメージからはかけ離れた会社でした。アジャイル型開発を当然のように行い、作りながら仕様を変えていくというスタイルでした。必要なら壊しては作る。先に触れたサービス・リリースを挟んでの PHP から Rails への乗り換えも、ゴールドマン・サックスでのそうした経験があったから決断できたのだと思います。もっとも、ゴールドマン・サックスは Web企業ではありませんから、Web技術は新たに習得する必要がありました。」(林氏)

商材の枠を広げて低迷期を脱出

こうしてサービスを開始したものの、売上がまったく伸びない時期が続く。

「最初のころは機能もコンテンツも不足していて、やらなければならないことが山ほどある。売上がなくても仕事の内容は充実しているので、あせりはありませんでした。これは本当にやばいとあせりだしたのは、最初に調達した資金が底をつき始めてからです。」(高橋氏)

2013年9月にシンガポールでの資金を調達し、資金難を回避できたが、このとき業績改善のために大きな決断をしたという。

「それまでは CtoC型のマーケットプレースというこだわりがあったのですが、BtoC の商材も仕入れて販売するようにしました。利用者にしてみれば、予約したいアクティビティがあるかどうかが重要、それが CtoC かどうかは関係ない。利用者によりよい旅行体験を提供するという目的に立ち返れば、CtoC へのこだわりは足かせでしかありませんでした。」(高橋氏)

BtoC の商材を加えてラインアップを拡充。売れる商材が増えることで、それまでくすぶっていた商材にも火がつくことがある。こうして Voyagin の運営は軌道に乗るようになった。

楽天傘下に入った狙い

Voyagin は2015年7月に楽天傘下になるわけだが、運営が正常化したあとであれば、独立を保つこともできたはず。買収を受け入れた背景にはどんな意図があったのだろうか。

「ベンチャーキャピタルから資金調達することも検討していましたが、買収には楽天が持つリソースや情報が利用できるという魅力がありました。大企業にしか使えないリソース、大企業にしか回ってこない情報があり、独立したベンチャー企業のままではそうしたものが利用できません。例えば、グループ入りしたことで楽天の営業・マーケティングの部隊が、Voyagin を楽天グループの商品として営業をかけてくれるわけです。 2020年の東京オリンピックに向けて訪日マーケットが成長していますが、この機を逃さずにビジネスを一気に拡大させるためには、楽天傘下に入ることがベストだと判断しました。実際、楽天の営業から地方自治体向けの仕事をもらって商品を開発したり、カスタマーサポートの課題について意見交換したりなど、機会創出と知見獲得の面で期待した効果は出ていると思います。」(高橋氏)

さらなるスピードを求めて

Voyagin のビジネスをさらに拡大するためには、商品開発のスピードを上げる必要があると高橋氏は言う。

Voyagin のようなサービスでは、事前のリサーチはそれほど重要ではありません。それよりも重要なのは、結果として得られたデータ。というのも、同じような商材なのに、大当たりするものもあればまったく受けないものもある。ですから、商材を投入する前にあれこれ悩んでもしかたがない。めぼしい物はどんどん投入して、手応えのあったものをどんな人にどこがウケたのか分析して大きく伸ばしていくスタイルがあっているのです。」(高橋氏)

商品開発のスピードアップに向けて、林氏が喫緊の技術的課題として挙げるのが、サービスのマイクロアーキテクチャー化だ。

「サービスを機能単位の細かなサービスに分割して、API やメッセージングを使ったサービス間連携によって全体を構成するのがマイクロアーキテクチャーという手法です。小さな単位で開発を行うことでコードの見通しが良くなり、開発効率が上がります。また、機能単位での置き換えなども容易になります。新しい商材に合わせて機能の追加が必要になった場合も迅速な開発が可能になります。
ほかにも、ペイメントシステムの柔軟性・操作性も改善したいですし、カスタマーサポートのオペレーションを効率化するためのシステムも必要です。やりたいことは山ほどあります。」(林氏)

「現在、Voyagin の主な利用者は英語圏の訪日外国人。すでにインドや東南アジアのアクティビティも扱っていますが、まずは日本の基盤を盤石にしたい。すべての訪日外国人に Voyagin が利用されるようになりたいですね。」(高橋氏)

スタッフに外国人が多いのも Voyagin の特徴だ。

「問い合わせがあったときにネイティブ対応できると安心感が違いますから、カスタマーサポートのスタッフを中心に外国人の比率が高くなっています。」(高橋氏)

「開発チームにも日本人のほかにロシア、フランス、インドネシアといった海外出身のエンジニアが所属しています。バックグラウンドが異なる人々が集まりながらも、みんなでいいものを作っていこうという気持ちでつながっている。新しい技術や課題に積極的に挑戦を続けるチームに育てていきたいですね。」(林氏)

執筆:森英幸

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