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トークセッション:CTO経験者が語る若手時代の炎上乗り越えトーク@Forkwell Meetup #1

Forkwell Meetup - この先生きのこるエンジニアとは」における、聞いているだけで身の毛もよだつような炎上案件からどう生き残ってきたのか? がテーマの、現役 CTO・CIO 3名を交えたトークセッション。
炎上を乗り越える術とは? そして乗り越えた先にあるものは何か? 三者三様の経験に基づく知見とノウハウを共有していただきました。

パネラー・モデレーター紹介

株式会社クラウドワークス 大場光一郎 氏


伊藤忠テクノソリューションズ株式会社・グリー株式会社を経て、日本最大級のクラウドソーシングサービス「クラウドワークス」を手がける株式会社クラウドワークスに2014年1月より参画、執行役員 CTO に就任。 2016年7月、同 CIO に就任。Ruby やソースコード管理に関する講演歴、著書多数。
ちなみに、イベント当日は大場氏の愛娘も参加。「我が子に炎上話を聞かせたくない」との発言でモデレーターを動揺させる場面もありましたが、果たして……?

株式会社ココナラ 恵比澤賢 氏


大手電気通信事業会社にてネットワーク機器およびソリューション開発に従事。ソーシャルメディア事業会社にて大規模プラットフォームの構築・運用や基盤システム開発等を経験した後、知財情報サービス会社でのシステム開発・マネジメントを担当、と筋肉質なキャリアが特長。
2013年、知識とスキルのオンラインマーケット「ココナラ」を企画・開発・運営する株式会社ウェルセルフ(現・株式会社ココナラ)にジョイン、CTO に就任。

株式会社フンザ 酒徳千尋 氏


2007年にウノウ入社、同社が Zynga に買収された後は Zynga Japan にてサービス開発・運用に関わる。2013年3月、笹森氏(現・フンザ代表)とともに株式会社フンザを設立、チケットフリマサービス「チケットキャンプ」を提供中。使いやすく人のためになる Webサービスを作るというサービス面でのモチベーションと、最新技術や美しいアーキテクチャを追求という技術面でのモチベーションのバランス感覚が持ち味。
趣味は Haskell や Clojure などの関数型言語の学習、ベガルタ仙台の応援、ザリガニの飼育。昔はもっと尖ったプログラマーだったが、ザリガニや小動物を飼い始めてから少し丸くなられたとのこと。

後藤大輔 氏(モデレーター)


SI企業にて組み込みソフトウェアや Webアプリケーション開発に従事したのち、フリーランスとして独立。以降は Forkwell 運営会社を含む複数企業の開発に参加しつつ、若者たちの仕事を見守り、時にアドバイスする、技術顧問もしくはメンター的な仕事を引き受ける頼もしい存在。
技術記事の寄稿やイベント登壇、インタビュー記事の連載、そして今回のパネルディスカッションのモデレーターと、開発以外の仕事もバリバリこなしている。

「バグを出したら◯◯も辞さない」? 若き日のにがい思い出話

炎上話に入る前に軽いジャブから……と、まずは各人の若手時代における苦労話をおうかがいしました。

若手プログラマー時代は「Rubyエンジニア」「スクラムマスター」などと自身にラベルを貼ってしまうことで、その後の変化を持たせることが難しくなった、と話す大場氏。周りの環境や求められるものが変わってきたときに、もともと積み上げてきた価値観を破壊し学び直す過程でいつも苦労してきた、とのこと。
Ruby 開発経験を多く積んだ大場氏は「Ruby の人」として周りに認知されることが多い中あえて PHP 開発の会社に入社したりと、自らの枠組みを壊しにいった経験を語りました。

「プログラマーは自分が書いたコードが一番読みやすいと思っている」という格言で会場を笑わせたのは酒徳氏。自身もそういったタイプだと自覚しているものの、若かりし頃は他人の書いたコードを厳しく指摘する、曰く「バグを出したら人格批判も辞さない」までの鬼リーダー気質を見せることもあったと、コミュニケーションロスを悔やむ想いを吐露しました。

「今日いらしてる皆さんは違うかもしれませんが、エンジニアは基本的に人の話を聞かない」と話し始めたのは恵比澤氏。自分のやりたいことを率先してやる自由なメンバーを束ねていた際「何かあったらリーダーが責任を取るんだよ」と言われ、「どうすりゃいいんだ!」とやりきれない気持ちで一杯になったリーダー経験を披露。
「自分自身も人の話を聞かないタイプなので、(現在は)そういった方を応援する気持ちの方が強い」とふりかえりつつ、今のチームは逆に大人しいエンジニアが多いので「もっと元気出していい」、と考えているのだとか。

新たなアジャイルプラクティスをも生みだす、炎上経験者の底力

炎上と一言で言っても、「プロジェクトが終わらない」「公にトンデモ発言をして袋叩きに合う」などその内容は様々。まず盛り上がった話題は、「プロジェクトが終わらない」方面の炎上経験でした。

エンジニアが主導権を持たない受託開発企業に勤めていたという大場氏は、当時の営業部長が持ち込んだ短納期の開発案件をこなさなければいけない局面にて、3名の開発チームで編み出した独自のアジャイルプラクティス「トリオプログラミング」の全容を語りました。

トリオプログラミングとは、PC を2台並べて2名がコーディング、残り1名がかたわらにダンボールを敷いて仮眠する布陣で、2時間おきに人員交代しながら24時間コーディングし続けるという過酷な技。これを発動させたがために納期に間に合ってしまい、「やればできんじゃん」と営業部長からおほめの言葉(?)をいただき、さらに次回以降はより過酷な納期を定められてしまうという「やらなきゃ良かった」エピソードを披露。
果たしてできあがったシステムはバグだらけだったため、納品先の顧客から営業部長に向けて灰皿が投げられた、というオチまで付いてしまったとのこと。

ウノウ、Zynga Japan とソーシャルゲーム開発に長く携わってきた酒徳氏は、企画者の気分とともにゲームの仕様が変わり、いつまで経っても開発が終わらない……という業界あるあるネタを公開。ZARD の名曲『負けないで』を BGM に、終わりの見えない開発に打ち込んだという苦労話を打ち明けました。

仕様変更の中には「一旦リリースした後で改善していこう」というレベルではなく、(良く言えば)ピボットを重ねた末「ぜんぜん違うゲームになってない?」という事例もあったのだとか。この経験から、プロジェクトオーナーなど上に立つ人の資質でプロジェクトの運命は大きく変わるものだ、と感じられたとのこと。

インターネットサービスがはらむ炎上の火種

社外からのクレームも炎上につながることがある、という点においては、コミュニティ系サービスに携わる3者間の事例で共通項が見出される場面も。

CtoC の Webサービス「ココナラ」では、開発に次いで人員の多いカスタマーサポートチームがたくさんの問い合わせをさばく、と恵比澤氏。「使い方がわからない」といった質問もあればユーザー間のトラブルに関する問い合わせもあり、何時間もご意見をおうかがいすることがあるのだそう。 同じく CtoC のチケットフリマサービス「チケットキャンプ」を担う酒徳氏も、チケットという商材の価格が高いこともありユーザーさんから真摯なご意見を受け取ることが多く、その分カスタマーサポートの負担は大きい、と語りました。

日本最大級のクラウドソーシングサービスを手がけるクラウドワークス社では、多くの人が楽しく働けるサービスを作ろうとしている、と提供側の想いを説明する大場氏。しかしユーザーから「仕事が続かないのはサービス側で(良い仕事を)紹介してくれないせいだ」といったご意見をいただくこともあり、対応が長期間に及ぶと大変、と苦悩の色を滲ませました。

歴戦のエンジニアはいかにして炎上を乗り越えてきたか?

サービスを提供する事業者と利用するユーザー間で「期待」のミスマッチが発生した場合、どんな作戦を取るべきか? という質問を皮切りに、炎上を乗り切るための手法も次々公開されました。

大手通信事業会社でルーターのファームウェア開発を担当していた際、インターネットが一瞬でも切れると顧客のお叱りを受けるという厳しい環境に身を置いていた恵比澤氏は「そもそも規格や仕様自体に穴があった場合、真面目にやればなんとかなるという世界ではない」と主張。半年に1回起きるバグを直すために24時間体制でログを確認した……という地道な経験も下積みに、適切なリスク判断の上で「表向きは何事もなく動いているように見せる」ということも時には大切であったとのこと。
それはエンジニアリングというよりは、いかに自由な発想で物事を解決に導くか、さしずめ「アート」の世界であり、言われたものをそのまま作っているだけでは到達できない領域である、と話しました。

トリオプログラミングを開発した大場氏は、件の案件について「問題の根本に向き合わず先送りにしてしまったと言われれば、たしかに……」とふりかえりました。後日談として、同プロジェクトはトラブル続きだったものの、ハードウェアも含め検証を重ねてシステムが動く条件を突き止めるに至ったと話し、「(炎上は)諦めなければなんとかなる」と力強くコメントしました。

3者の中で、もっとも真っ当に炎上を乗り越えたであろうエピソードを紹介したのは酒徳氏。ウノウ在籍時、大手ゲーム会社との協業による農園ゲームの開発現場にて、開発が進まず炎上寸前だった状況に置かれた際、協業会社との定期的な顔合わせミーティングを設けたことでコミュニケーション不全が解消され、開発サイクルが円滑に回るようになった、と話しました。

共同開発の現場で「サービスをリリースする」というゴールを見据え、「妥協」ではなく「協力して解決策を見つけた」ことが鍵となりうまく行ったのでは、とふりかえる酒徳氏。また、「この人はこう考えているのでは?」と業務で関わる相手の腹づもりがわかると、例えば先回りして設計を進めたりと先手を打つことができるため、協力体制をより強固にすることができる、というノウハウを披露しました。

炎上から守り・守られる、チームメンバーとの絆

組織が大きくなると、個人の力で炎上を乗り切るのはなかなか難しいもの。チームメンバーを鍛えたり、追いつめられたときにケアしたり、といった試みの話も出てきました。
向き合うべき問題を抱えている人には必ず徴候が出る、と言いきるのは大場氏。メンタリングによって普段からメンバーの状態の把握を重視しつつ、個人のエラー率にも気を配っているとのこと。

チケットキャンプ」運営のフンザではサービス成長優先の体制で、チームビルディングに手が回らないことに課題感がある、と酒徳氏。とはいえ、フンザ創業から炎上をあまり経験していないと前向きに語り、30代メンバーの立ち上げによる「シニアスタートアップ」ならではの豊富な経験をアピールしました。

ブログ経由の大炎上から、チームの絆を感じたというほっこりエピソードも。
とある Webメディアに「若者を全力で潰す」と煽り気味のタイトルでインタビュー記事が載った際、サービス批判を絡めた派手な炎上に巻き込まれたという大場氏。「大丈夫ですか」と数多くの気遣いを受け、周りの人々の暖かさ、優しさを一身に感じたとのこと。

大場氏はさらに、技術と関係のない、エンジニア自身が制御できないところでも炎上は勃発すると示し、炎上後の対応で良い方にも悪い方にも事が進む可能性がある、と発信。組織としての主張はぶれることのないようにしつつ、炎上には真摯に対応することが必要であると結びました。

炎上を乗り越えたその先にあるものは?

炎上を乗り越えた人々が得られる「価値」とは、一体何なのでしょうか?

酒徳氏は Zynga 日本支社(現在は撤退)での経験から、「悪い状況に置かれたからこそ、どこまでその人を信頼できるか、また自分を助けてくれるのは誰なのかがわかるようになった」と話しました。組織そのものがうまくいかない状況が人とのつながりを見極める良い機会を生み、当時から現在まで一緒に働いているメンバーもいるのだとか。
また「安易に社外 SNS などオープンな場に愚痴を書かない」「文句を言うのみならず解決策を提示する」など具体的な行動を例に挙げ、周りに信頼されやすいとされるエンジニアのタイプを示しました。

わかりやすいプロジェクト破綻や大きな障害といった炎上には、立ち向かって鎮火するしかない、と訴えるのは恵比澤氏。「火事場の馬鹿力」をも推進力に炎上を乗り越える経験を積み重ねてきたことが何より現在の自信につながっているし、チームメンバーをケアするスキルとしても身に付いている、と前向きに語りました。

「炎上しないに越したことはないし、穏やかに人生を送れたら一番良い」と総括して会場を和ませたのは大場氏。
ブログに関する大炎上案件では、大場氏を取り巻く人々が反論ブログを書いて新たな火種に……と混乱が起きたという追加エピソードとともに、「そういう(大事に思ってくれている人との)つながりは大事だし、今だにお付き合いもある」と話し、良い振る舞いは自身にも反映している、というスタンスを示しました。

炎上はどうにも避けられないもの。しかし乗り越えることで人は成長することができる! という勇気を与えてくれた3者のパネルディスカッションはここまで。会場には「炎上に果敢に立ち向かっていこう」という強い想いが(恐らく)満ち満ちていました。


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