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「成長のための踏み台にして構わない」サービスと技術者とが共に成長する CBcloud とは?

CBcloud株式会社が運営する軽town」は、軽トラックで荷物を運ぶ個人事業主のドライバーと荷物を運んでもらう荷主を仲介するマッチングサービスだ。軽トラ版 Uber とも言えるサービスだが、創業の背景には、個人ドライバーの地位向上を図りたいという強い思いがあったという。
同社代表取締役 CEO の松本隆一氏(写真右)と CTO の徳盛太一朗氏(写真左)に、創業の経緯と今後の事業展開について伺った。

軽貨物運送のラスト1マイルをシステム化

CBcloud代表の松本氏は、元航空管制官という一風変わった経歴を持つ人物だ。「CB」は航空管制で“積乱雲”を意味する専門用語であり、CBcloud という社名には、軽貨物運送に革命をもたらしたいという願いが込められているという。

安定した航空管制官の職を辞して、CBcloud を起業したきっかけは、義父との出会いがあったと松本氏は振り返る。


松本:
義父は荷主と個人の配送ドライバーを仲介する運送会社を経営していたのですが、その仕事の時間の多くは、電話に費やされていました。荷主から電話で受けた依頼を、ドライバーに電話でブッキングする。そのドライバーの都合が悪ければ、別のドライバーを当たるといった具合で、まったくシステム化されていない。これをなんとかできないかと相談を受けたのです。

そうした状況は義父の会社だけではなく、軽貨物を扱うほかの運送会社でもみな同じようなものです。工場から倉庫、倉庫から配送センターなど、物流の基幹部分はシステム化されていますが、末端部分のラスト1マイルはアナログに頼っているのです。


高校時代にプログラミングを習得し、予備校向けの授業配信システムなどを開発した経験のある松本氏は、義父の会社向けに運行管理システムを開発した。配送依頼を入力すると登録ドライバーのスマホやタブレットに通知が飛び、その依頼の条件に合うドライバーが自らエントリーできるというシステムだ。
ちなみに、このとき開発したシステムはヤマト運輸に採用され、現在もほぼそのままのかたちで使われているという。


松本:
この運行管理システムによって、義父は電話に追われる日々から解放されましたが、同時に登録しているドライバーさんも、電話が鳴るのをひたすら待つという受け身の姿勢から解放されました。

義父は自分の会社だけでなく、軽貨物運送全体の問題、端的に言えば多重の下請構造による非効率性とドライバーの待遇の悪さをなんとかしたいという熱い思いを持っていましたが、ドライバーの待遇の悪さには、仕事のとり方にも原因があります。
仕事を回してもらっている立場のドライバーには、依頼が来なくなったらどうしようという不安が常にあるので、来た仕事は提示された条件で受けるしかない。どんな仕事があるのか、ドライバー自身が一覧にできるようにして、自身で仕事を選べるようにすることは、待遇改善の第一歩になると思います。

退路を断って、軽貨物運送のサービスプロバイダーへ

運行管理システムを開発して間もない2015年、松本氏の義父は急逝してしまう。急遽、松本氏は義父の会社を引き続くことになった。しばらくは運送会社を運営していた松本氏だが、軽貨物運送のマッチングサービスを実現するために、CBcloud を設立する。


松本:
もともと、軽貨物運送のマッチングサービスというアイデアは義父が考えたもので、「軽town」というサービス名称も義父が遺した企画書から採ったものです。
ただし、マッチングサービスを提供するには、義父から引き継いだ運送会社を手放す必要がありました。競合の運送会社が運営しているサービスでは、ほかの運送会社は乗ってきてくれません。そこで運送会社は営業を譲渡して手を引き、サービスプロバイダーに専念することにしたのです。


軽town」のサービス提供に向けてシステムを開発し直すタイミングで参加したのが、現在 CTO を務める徳盛氏だ。それまで製造業向けのシステム開発を行っていた徳盛氏は、軽貨物ドライバーの待遇改善という点にも共感したという。


徳盛:
松本から軽貨物業界の話を聞いて考えたのは、IT業界と同じだということです。IT業界にも多重の下請構造があり、末端のプログラマーは決して待遇が良いとは言えません。「軽town」の構想を聞いて、これが実現できれば軽貨物業界に革命を起こせるのでは、と期待が膨らみました。

私が参加したときは、ほぼ要求仕様は固まっていましたが、開発はこれからという段階でした。
一運送会社向けに作られた運送管理システムでは、登録された依頼をドライバーは早い者勝ちで獲得するようになっていましたが、「軽town」にはドライバーの評価機能があり、ドライバーから料金や配送可能時間を逆提示することもできます。依頼主は、エントリーしたドライバーの中から、評価や料金、時間などを判断材料にドライバーを選定できます。こうすることで、依頼主とドライバーの関係をより対等なかたちに近づけることができるはずです。

開発にあたっては、とにかく簡単に使えることを重視したという。


徳盛:
軽town」の利用はスマホが中心。利用者も IT に疎い人が多いので、操作のしやすさを最優先に、例えば表示する情報を絞り込んで文字サイズを大きめにするといった工夫をしています。また、今後の機能強化としては、配送ルート指示機能の開発に取り組んでいます。

松本:
軽貨物では、積み地は一箇所でも、配送先が複数になることがよくあります。多いときには30箇所以上になることもある。しかも、道路の左側に車を着けないと、荷物の積み下ろしができません。
こうしたこれまでドライバーの経験に頼っていた配送ルート決定を、アプリで提供できるようにしたいと考えています。この複雑な条件下でのルート検索機能は、軽貨物運送だけでなくさまざまな分野で応用できると思います。


現在、「軽town」は関東一都三県を中心にサービスを展開しているが、今後はパートナー提携を軸にサービスエリア拡大を図っていくという。


松本:
軽貨物のドライバーは、個人事業主といってもどこかの会社の半ば専属のような状態になっていることが多いのです。そこで運送会社と提携を結んで、ドライバーごと「軽town」に参加してもらう。運送会社は運送管理業務を軽減でき、繁忙期にもドライバーを手配しやすくなる。
一方のドライバーは一社依存の状態から抜け出し、より多くの機会を得ることができます。

現在は、サービスエリア拡大と並行して、プラットフォーム機能の強化を図っている段階ですが、国際流通大手と組んで東南アジアでサービスを展開する計画もあります。

B2C、C2C の新サービスへ向け開発力を強化

CBcloud では、この春のサービス提供開始を目標に、「軽town」とは別の B2C型サービスの開発を進めているという。


松本:
宅配業者や引越し業者では、微妙にスケールが合わない荷物というのは結構多いと思います。例えば、テーブルを一つ運びたいとか、イベントでの荷物運びとか。そういうときに、スマホで依頼をかけると、近くにいるドライバーがすぐ来てくれる。

ちょっと突拍子もないと感じるかもしれませんが、全国のタクシーの台数24万台に対し、軽貨物トラックは15万台あります。これを動員できれば、非現実的ではありません。座席が空いていれば荷物と一緒に同乗できる点もメリットになるでしょう。

そして、現在は法的課題がクリアになっていませんが、ゆくゆくは C2C型のサービスにもつなげていきたいと考えています。素人でも物を運べるようにすることは、軽貨物ドライバーの仕事を奪うように思われるかもしれませんが、ドライバーの評価システムがきちんと機能すれば、むしろプロのドライバーの価値が再評価されることにつながると考えています。

徳盛:
新しいサービスでは、対象者が個人に広がりますので、さらに使いやすさを追求する必要があります。

フロントエンドのアプリ開発では、加速度センサーなどのデバイス機能をフル活用できるよう、Swift や Java などでネイティブアプリの開発に長けた人を求めています。加えて、荷主サイドは Webアプリを使用するので JavaScript や CSS での開発経験がある Webエンジニアも同時に募集しております。
バックエンド側の開発は主に C# で行っており、先に触れた複雑なルート検索など、アルゴリズムの開発に興味のある人を求めています。

松本:
もっとも、まだまだ小さな会社ですから、技術のことだけ考えていればよいというわけではありません。自発的に考えてサービスづくりができるか、といったビジネスマインドが重要だと考えています。むしろ、CBcloud を技術者として成長するための踏み台にしてもらって構わない。サービスと一緒に成長できる場を提供できればと思います。

徳盛:
私は以前、製造業向けの特定の人しか使わないシステムを開発していたので、もっと一般の人に身近なものを作りたいという思いがありました。CBcloud に来て働いていると、サービスを通じてエンドユーザーの顔が見えるんです。
この自分で作ったサービスが使ってもらえる喜びを、ともに味わいたいですね。

執筆:森英幸