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残された時間で「世界を変える」ことに真剣に向き合う - Nature 大塚雅和(mash)氏

この連載では、「Forkwell Jobs」の開発にも関わるフリーランスエンジニアの後藤大輔 (@idesaku) が、さまざまな企業で働くエンジニアとリレー形式で対談を行っていきます。

今回のゲストは、元カヤックのエンジニア、そして学習型リモコン「IRKit」の作者として知られ、現在はベンチャー企業「Nature」のファウンダー兼 CTO を務めている大塚雅和 (@maaash) 氏です。

今回のリレーインタビューは2部構成にてお届けします。

大塚さんご指名のリレー相手は、当記事の最後でご紹介します!

執筆:高橋美津

「Nature Remo」ではより多くの人に影響を与えたい

idesaku:
「IRKit」の次世代版とも言える「Nature Remo」の展開が、いよいよ本格的にスタートしましたね。Natureと、その主力製品である「Remo」がどうなっていくかについて展望をお聞かせ下さい。

mash:
「家電のリモコンをシンプルでスマートなものに」というのは、共通するコンセプトなのですが、IRKit の時にはすべてを1人でやっていたので、その意味で限界がありました。Nature には、僕の苦手なところを補完する形で、CEO の塩出がいてくれます。自分は自分の得意な部分にフォーカスできる状況になっており、よりプロダクトとしても発展させやすい環境にはなっています。

idesaku:
Nature で、大塚さんは「ファウンダー兼 CTO」となっていますが、経営に対しても影響力が行使できる立場ということですよね。

mash:
決断を行う分野を分担している感じですね。事業全体について互いに意見を出し合ったり、相談したりということはしていますが、最終的な決断は、経営については塩出が行い、エンジニアリングについては僕が行うという立場です。

idesaku:
企業体としてやっていくとなると、競合製品の動向なども気にしていかなければならないのではないかと思います。恐らく「IRKit」が出た当時には、一般にあまり競合とされるような製品を作っているメーカーもなく、それもあって脚光を浴びた部分があると思うのですが、現在では「eRemote」のようなスマートリモコンも出てきていますよね。

mash:
そうですね。eRemote は、Nature Remo と結果的にシェアを食い合う形になる製品だと認識しています。

IRKit の時は、ある意味、一般のコンシューマーは突き放す形で「エンジニア」にターゲットを絞っていた部分があります。そもそも、製品のトップページに設計図や API リストが出ていますしね(笑)。

その点「Nature Remo」は、より一般の人も普通に「家電」として使え、値段に見合う機能が実装されていることを目指して開発を行っています。残念ながら、現時点ではハードが持つ機能にソフト側が追いつけていないのですが、一般販売のタイミングでは、より多くのことができるようになります。

idesaku:
SDK などを提供することで、より深く「Remo」をハックできるような方向性は考えておられないのですか。

mash:
今回は、より一般の人に違和感なく使ってもらえるものを目指していますので、そういう方向性にはないですね。ただ、API は順次公開していく予定で「IRKit」を面白いと思ってくれた人は、その高機能版として引き続き楽しんでもらえるはずです。

idesaku:
クラウドファンディングでの支援者の中には、既に Remo を入手してレビューを書いていらっしゃる方もいますね。

mash:
Remo の API については、まだ正式に公開していないのですが、IRKit との比較で独自に調べて見つけ出し「同じことができた」と報告してくださっている方もいます。さすがだと思います(笑)。IRKit自体の製造は終えてしまったのですが、できれば、IRKit でいろいろとやってくださっていた方々は、ぜひその資産をベースに Remo に乗り換えてきてほしいです。

Remo には、僕が IRKit に入れたかったけれども、どうしても無理で諦めたような機能や仕様も入っています。デザインも洗練されましたし、いい製品になっていると思います。

Nature Remo はこれまでとは別視点で「世界を良くする」アプローチ

idesaku:
今回、Remo を作るにあたって「面白いもの」をつくるだけではなくて、「子どもたちの世代に対して良い影響を与えられるもの」をつくりたいと考えられたということを他のインタビューで拝見したのですが、そうした考えに至った経緯についてお伺いしてもいいでしょうか。

mash:
ちょっと根源的な話になりますが「僕が作ったもので、世界を少しだけでも良くしていきたい」というのは、僕がものづくりをするときの軸となる考え方なんです。

「IRKit」は、OSSハードウェアとして「いじれる家電製品」を家の中に置くというコンセプトを実現したもので、これによって「世の中がちょっと良くなった」という満足感はありました。

で、次に作る製品として似たようなコンセプトの「IRKit 2」的なものを考えていたときに、CEO である塩出に誘われて、その企画に乗ったというのが「Remo」に携わるきっかけになります。

塩出も「世の中を良くする」ことを目指して活動する起業家ですが、彼がフォーカスしているのは世界の「エネルギー問題」でした。より効率的で安定したエネルギーの需給管理を行うにあたっては、家庭におけるエネルギー需要を最適化していくことが重要な要素のひとつになります。そこで、エアコンをはじめとする家庭用電気機器を集中的にコントロールできる「スマートリモコン」が大きな役割を果たすわけです。

そうした世界規模でのエネルギー問題に、僕が今まで作ってきたものを応用することでアプローチできる可能性があることに気づけたというのが、彼と「Nature Remo」を作ることを決めた理由のひとつでした。

idesaku:
塩出さんとの出会いで、「作る人を増やす」以外にも、「世界を良いものにする」ためのアプローチ方法が見えたということですか。

mash:
僕が作った「IRKit」は、世の中に何らかの影響を与えたと思うのですが、それでも「自分と似たような感覚や知識を持った人」にターゲットが絞られていたと思います。より多くの人に、より広い範囲で影響を与えるためには、他の人と組んで「自分と似ていない人」にもアプローチする必要があると思っていました。

自分にとっては、これまで「作る人を増やす」ことが「世界を少し良くする」ためにできることでした。でも、世界を良くするためのアプローチは、いろいろあっていいわけですよね。塩出は「エネルギー問題解決への貢献」を通じて、それをやろうと考えていました。もしそれに、自分がこれまで取り組んできたことが役立つのであれば、一緒にやってみる理由になります。

自分たちが作ったものが、少しでもエネルギー問題の解決に貢献できれば、10年後、20年後に今の子どもたちが主力として動かしている世界へ良い変化を与えることができる可能性も高くなるわけです。今は、それに全力で取り組んでいます。

残された「持ち弾」でどれだけ世の中を変えられるかに挑戦したい

idesaku:
現在は「Nature Remo」を広く知らしめて、製品として育てることが最大のミッションになっていると思います。では、その次の段階として、20年後とまではいかなくても、10年後くらいの将来にどういったところを目指しているのかについてお伺いしたいのですが。

mash:
個人でプロダクトを作ってみた経験などを通じて、自分が納得いく形でものを作り続けようとすると、だいたい2年に1つくらいのスパンで新しいプロダクトを手がけるのがいいかなと考えるようになりました。そうすると、今後10年の間に5つ程度は新しいプロダクトを世に出せる計算ですね。

ただ、自分は今40歳なのですが、そうすると人生の中で撃てる「残り弾」が10個から、多くて20個くらいまでということになるんです。残されている時間はそれほど多くないなと焦りも感じます。

最近、ポッドキャストで TED のプレゼンテーションをよく見ているのですが、あそこに登壇している人たちがやっている研究や、作っているプロダクトって、世界をバンバン良く変えているじゃないですか。Tesla のイーロン・マスクなんかも、世界の問題を根源から解決しようとしていて、超格好いいですよね(笑)。

そういう人たちについて知ってしまうと、自分は「2年に1つ」のプロダクトで、どれだけ世の中を変えていけるのだろうかと、ちょっと考えてしまいます。

idesaku:
そこまで「世界を変える」ということに真剣に向き合おうとする人も、世間にはそんなに多くないですよね。大塚さんのそのこだわりはどこからくるのでしょうか。

mash:
うーん、僕個人だけが「楽しい」と感じられることをやるのは、ものすごく簡単なんですよ。実際、アニメを見ていれば幸せだったりしますし(笑)。自分で面白いコンテンツを消費することも楽しいのですが、それ以上に、みんなが「自分が作ったもの」から影響を受けて変わっていくということに面白みを感じるんですね。

idesaku:
「世界を変える」ことを本格的に目指すとなると、勉強会へ頻繁に顔を出して積極的に個人としての名を売ったり、会社を組織として大きくしていったりといった方向性も求められるのではないかと思います。そういえば、Nature では現在募集もされていますよね。

mash:
ええ、もう少し会社としての動きをスピーディーにしたり、ラインを増やしたりというようなことはやりたいと思っています。

idesaku:
先ほど、大塚さんが「苦手」とされているような部分は、Nature において塩出さんが補完的にサポートしてくれているというお話しだったのですが、そうなると、今後は大塚さん自らも「苦手」なことをやっていかなければならなくなるのではないですか。

mash:
そうですね…。「IRKit」では自分が苦手なことを極力やらずに、得意なところだけでやってみるというアプローチをとりました。ただ、今回の「Nature Remo」については「自分に似た考え方を持つ人以外にも、広く影響を与えたい」という思いで作っています。そうなると、自分としても「苦手」を少しずつ克服できるよう、変わらないといけないのかもしれないですね。…うーん、変われるのかなぁ(笑)。

大塚さんのご指名は、タチコマを作っているあの方!

idesaku:
今回は、長時間にわたって興味深いお話しをありがとうございました。さて、このインタビューはリレー形式になっていまして、次にバトンを渡す相手を大塚さんにご紹介いただきたいと思っています。

mash:
karakuri products の松村礼央さんの話を聞いてみたいです。ロボットエンジニアで、タチコマの1/2スケールのロボットを作っている人です。僕は彼が主催するいろいろなワークショップに参加したりしていましたし、アドバイスもたくさんもらいました。尊敬しているエンジニアです。

松村さんは、ぶっ飛んでいると思いますよ(笑)たぶん、いろいろ面白い話をしてくれると思うなぁ。

idesaku:
ロボットエンジニアの方は、この連載でも初めてになりますね。それにしても、大塚さんをして「ぶっ飛んでる」と言わしめる方となれば、それだけでもお目にかかるのが楽しみです。本日は本当にありがとうございました。



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