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シェフとエンジニアの二刀流。「食×IT」で変革を目指す男・佐合和也〜Forkwellエンジニア成分研究所

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いまは無人レストランを作っています

――佐合さんは、シェフとエンジニアのパラレルキャリアというユニークな経歴を持っておられます。現在は、どんな仕事に従事されているんですか?

佐合和也(以下、佐合) 2018年4月から友人と新しい会社を立ち上げまして、無人レストランをオープンさせるプロジェクトをやっています。IoTを使い、リアル店舗として無人レストランをオープンさせる計画なんです。

――無人レストラン! 面白いですね。

佐合 物件は見つかったので、いまはシステムを構築して、実際に何を売るか固めつつあるところですね。最初は裏側(バックヤード)までロボットにしようと思っていたのですが、さすがにそれは難しそう。スマホからメニューを見てオーダーし、お客さんは宅配ボックスみたいなところからピックアップして帰るだけ、というテイクアウト専門店舗を作ろうと思っています。

――確かに、オーダーで行列ができる店舗も多いですよね。スマホであらかじめ注文して、受け取りをボックス内にすれば劇的に効率は高まりそうです。このアイデアは、誰が着想したんですか?

佐合 一緒に仕事をしている人が、元々は飲食店に部品や空調、照明などを卸している事業をしていて。ある時、飲食店から「新しい提案ないの?」と言われたので、調べたらアメリカでテイクアウト専門のピックアップ事業をやっている会社があると。それに着想を得たみたいです。

最初はその事業の日本における代理店をやろうとしていたんですけど、いろいろあってそれは難しいという話になり。「じゃあ、僕らでやろう」となって、プロジェクトに誘われたのがきっかけです。去年はプロトタイプを作って、札幌の展示会に一緒に出たりしました。

個人的にも、自分では社会的なボトルネック、解決したい問題の1つだと思っていたのと、単純にすごく楽しそうだと思ったのでジョインした形です。

――佐合さんはシェフの経験も豊富ですが、今回のレストランではご自身で調理することもあるんですか?

佐合 いや、今のところそのつもりはないですね。誰でも作れるオペレーションでやりたいなと。人に依存しちゃうと良くないですし、働き方の自由度にも影響があるので。店舗は秋葉原を予定していますけど、基本的には昼間だけの稼働。夜は貸しスペースにして、そこで自分が料理を作ったりイベントをやるのも楽しそうだなと思っています。

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料理は科学ですから、なんでも作ります

――面白いですねー。そもそも、なぜシェフとエンジニアの二刀流を志したんですか?

佐合 これはもう、人の縁ですね。元々は、恵比寿のバーで週一で料理を作ったりしてたんです。そこで人脈が広がって、最近はホームパーティやパーティルームで料理作ってみたいなオファーもあります。

――専門は何料理、とかあるんですか?

佐合 オーダーいただければ何でも作ります。「ワインにあうもの作って」と言われればそれも作るし、ヘルシーなもの作ってと言われれば作るし。去年にアノヴァ(参照)という低音調理器を買ったんですが、例えばローストビーフを作る際はジップロックに肉を入れ、温度調整して「この温度で何時間茹でる」って設定すれば、中に火は通ってるけど肉汁は失われない状態が作れるんです。

料理って、科学ですから。タンパク質は55度で変質を始めてしまうので、55度から68度ぐらいのあいだで調理し続ければ肉汁を逃さずクリーンな状態で食べることができます。似たような方法で、鶏ハムを作ったりとかもできますよ。

――非常に豊富な知識を持ってらっしゃいますが、元々料理人を志したきっかけは何だったんですか?

佐合 実家の影響が大きいと思います。祖父がすごい食通で、そこに影響されていた部分があります。幼少期から、いつも良いものを食べさせてもらって。大学に入って上京してからは美味しい店を食べ歩いたり、インターン先で社長や上司にいい店に連れて行ってもらったり。そうこうしているうちに自分でも作りたくなったんですね。

――食通の料理評論家が、たくさん食べているうちに自ら厨房に立ちたくなるような経緯なんですね。料理と仕事のキャリアは、パラレルで進行していったんですか?

佐合 そうですね、パラレルですね。ケータリングなどをした結果、そこから仕事につながったことも何度もあります。

キャリアとしては、最初は大学時代に会社を作って、受託開発メインでやってました。同時進行で料理も作って。当時は趣味で作って、住んでいたシェアハウスのメンバーに振る舞っていました。1人分作るのも3人分作るのも一緒ですから。

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フィリピン3週目で、ホールドアップされました

佐合 会社は、7年ほど続けました。途中で、同時進行でリクルートの友人ともう1社立ち上げて教育関係の会社もやったりもしました。学生と企業のミスマッチを解消するために、業界分析をテーマにしたボードゲームみたいなものを作って。1回プレイしたらどんな業界なのかわかるようなものを、事業としてやってました。

――会社に7年在籍して、その後に初めて会社員になられたんですね。

佐合 そうです。いろいろあって1回仕事をやめて、世界一周しようと思って。結局アジアだけで帰ってきたんですけど(笑)。25、6歳のときですね。アジアに行って現地で知り合いに会ったり、人を紹介してもらう中で、「日本よりも勢いがあるな」と感じました。「アジアで1回働いてみたいな」と思って、日本のガイアックスという会社に就職しました。

ガイアックス社にはフィリピン支社があって、そこでエンジニアを採用したんですね。僕自身は日本で採用され、青森などで事業を立ち上げたあとにフィリピンに渡りました。いろいろな経験をさせてもらいました。現地採用をやりつつグループウェアの事業責任者的なことをやったり。期間は1年ほどでしたが、多くの経験を積ませてもらいました。

住んでいたのは、マニラのすぐとなりにあるマカティというエリアです。日本で言うと六本木とか銀座みたいなところ。外国人が多い地域で、経済や金融の中心と言われています。

――その1年で最も印象的なことはどんなことですか? 

佐合 住み始めて3週目、タクシーでホールドアップに遭ったことでしょうか(苦笑)。知らない場所に連れて行かれて、扉はチャイルドロックを掛けられて。財布の有り金5,000円ぐらいを全部出しました。スマホをとられなかったが不幸中の幸いでしたね、それで帰って来られたので。

――うわあ……どういうシチュエーションだったんですか? そのあたりに停まってるタクシーに乗ったんですか?

佐合 日本から出張者が来ていて、タクシーに分乗しなくてはいけなくなって。それで、4人だけ別のタクシーに乗ってもらい、僕は1人だけ別のタクシーに乗ったんです。流しのタクシーに。

――日本に帰りたくならなかったですか?

佐合 一瞬そういう気持ちにはなりましたけど、「いやいや、こういう国だからこそチャンスがあるんだ」と思って切り替えました。とはいえ、日本の常識がぶっ飛ぶ経験は何度もありましたね、毎週停電になりましたしネットにも繋がらなくなりましたし。

――フィリピン人って日本人と比べて特徴ありました?

佐合 陽気ですね。基本的には。ただ、「プライドが高いので、マネジメントの仕方は気をつけるように」と前任者からは言われていました。みんなの前で怒るなとか、1人だけ特別扱いするなとか。

フィリピンは厳格なカトリックだったこともあり、良いメンバーばかりでした。でもダメなことはダメって言わないと勝手に解釈したりするので。これは良くてこれはダメという線引きはちゃんとしていましたよ。

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「理想は、街の中華屋さん」?

――シェフとしての経験も聞かせてください。大学時代は好きで作ってた感じなんですか?

佐合 大学時代も好きでしたし今でも好きで作っている感じはありますけどね。

――プロのシェフに習ったりはしましたか?

佐合 そういう経験はないですけど、海外で初めて食べるものがあったら「ちょっと厨房見せて」って言って作り方を聞いたり、屋台のおばちゃんにいろいろ聞いたり。海外のスーパーでわけのわからない調味料買って来たりとかもよくします。

――シェフって、求められないと作る機会はないと思うんですが、自分から売り込むんですか?

佐合 いえ、営業はしないですね。人のご縁で「今度パーティやるんだけどこういう系の料理作ってくれない?」と依頼をいただくことが多いです。お金を稼ぐというより、自分の使ったことのない食材で調理してみたいとか、そんなレベルですね。

――聞いてて思ったのは、佐合さんは抜群にコミュニケーション能力が高いですね。

佐合 そんなことないですよ。もともとは引っ込み思案だし喋らないほうですし。1対1とかだと喋るんですけど、例えば6人とかを超えると喋らなくなったり。料理を作るときもキッチンにこもってる方が好きだし。たまにキッチン覗きにくる人とがっつり喋ったりはしますけどね。

――料理自体はいつから始めてるんですか?

佐合 大学入ったぐらいですかね。高校の時も多少はやってたけど本格的に始めたのは大学ですね。大学の友達が家に遊びに来た時にパスタを作ったりとか。冬に鍋パーティをやったり、夏に潮干狩り行ってあさりパーティやったり。

――なんでもいけるんですね。イタリアンだとは基本的にはどんなものを作るんですか?

佐合 今日はこれから目黒でカプレーゼとかペンネ、サーモンのカルパッチョとかそれに合わせたガーリックトーストとかをお出しする予定です。

――なるほどー。今後、どんなことをやっていきたいですか?

佐合 直近だと、日本だけでなく世界で無人レストランのシステムと日本食を含めたトータルパッケージで販売したいなと思っています。自分のやりたい「食×IT」というのもそれで実現できるんじゃないのかなと。

日本国内で無人レストランが受け入れられるのって、もっと先になると思ってたんですよね。でもアジアやサンフランシスコとか行って現地の知り合いに聞いてみたら、サンフランシスコもテクノロジーは発達してるしそういう需要はあると思うと。

それより先は、まだ考えてないですね。自分の性格上、飽きてると思うので。本当はリアルの飲食店をやりたい気持ちはあるんですよ。理想は街の中華屋さん。というのも、客がいなくても回ってるところが多いじゃないですか。持ち家でやれば家賃はかからないし、食材のロスも家で食べれば良い。そうなったら、不動産を自分で持った方がリスクも少ないと思うので。将来的にやりたいなと思いますね。

――将来設計がちゃんとしてますね。

佐合 行き当たりばったりですよ(笑)。

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――ここからは、佐合さんの働き方に関するこだわりを伺います。上記レーダーチャートは、こだわりを6項目に分け、計20点満点として振り分けていただいたものです。一つずつ、数字の理由を伺います。

・専門性向上 1

佐合 振り分けたら、というところで。ITはやってて得意ではあるけど、そんなに好きじゃない部分があって。何かを成し遂げるためのツールでしかないんです。成し遂げるのに必要であれば勉強するとか、時間を投下するのは良いんですけどね。

――最優先ではないんですね。

佐合 何をやろうかなと考えるほうが好きですし、それに対してどういうアプローチを取って行くのか。振り分けるなら、優先度は低いかな。自分1人でやらなくてもできる人を連れてくることで実現できると思います。金銭面やスケジュール面で難しい場合、じゃあ自分でやるかなと。

・社畜度 2

佐合 郷に入れば郷に従うじゃないですけど。デスマーチみたいなところにアサインされた時も、まあやってる感じは嫌いではない。ただ、それが続きすぎると嫌だなというのはあります。何かを成し遂げる時に、濃密な時間を共有したほうが仲良くなったり良いプロダクトができると思っているので。

・働き方自由度 5

佐合 自由度って色々あると思うんです。場所もあると思うし時間もあると思うし。個人的には時間はどうでもよくて、場所が自由だと良いなと思ってて。旅行が好きなのでリモートとか。最近は、カフェよりもカラオケに行きます。結構水分を取るので、カフェだと何杯も頼むとコスパが良くない。あと、集中したいときは雑音が気にならないところがいいです。カラオケだと個室だし飲み物もありますしね。

――テーブルが低くないですか?

佐合 低いです。それだけですね。気晴らしで一曲歌ったりとかね。

・事業内容 1

佐合 昔は重要だと思った部分です。でも、「誰とやるか」のほうが今は重要だなと思って。信用できる仲間とやっているのであれば、事業内容はタイミング次第で「やっぱりこっちの方が良いんじゃないか」となったら変えられるわけですから。仲間と話して腹落ちして「だったらこっちをやればいいよね」と変わって行くものだと思っているので。大枠として、「社会にインパクトを与える」という目標がブレなければ何やってもいいなと。それを実現するための事業って、1つに限らないんじゃないかなと思いますね。

・お金 1

佐合 物欲がそんなにないので、ある程度暮らしていける額さえクリアしていれば、そんなにはこだわりません。行きたい場所もだいたい行ったし、美味しいものも外で食べるより作ったほうがコスパがいいです。

――行きたい場所だいたい行ったというのはどこに行ったんですか?

佐合 国内だと小笠原諸島、知床、沖縄の離島はだいたい行きました。与那国島や、レアなところだと大東島。自転車で一周しましたよ。国外だと直近ではカナダ、アメリカの西海岸、世界一周したときにはフィンランドやエストニアにも行きました。

・仲間 10

佐合 一番重要視しています。前の会社はいい仲間に恵まれてて、「働きたい人と働いている方が楽しいな」と思ったんです。楽しい方がパフォーマンスも出やすい。自分1人でアウトプット出すより、仲間と一緒に出すほうが、チームとして何を成し遂げたかが自分にとっては重要かなと思ったので。1人でできることは限られている部分はありますけど、10人でやれば10倍以上できます。その仕組みづくりのほうが好きです。

転職はマッチング、こだわらなくていい

――転職をする人に向けてメッセージをお願いします。

佐合 転職ってマッチングだと思っているので。企業が人を欲しているタイミングとか事業内容とかは変化しつづけていきますよね。機会、企業なんて星の数ほどあるし、タイミングも星の数だけある。あまりこだわらなくても良いんじゃないかなと。

――どうしても入りたい企業があったとき、条件面で合わなかったらどう折り合いをつけるんですか?

佐合 僕は交渉しない方です。入ってからアウトプット出せば、ある程度交渉できるので。入る前からごねたりするとお互い気持ちよくないのかなと。それはそれで大事なことだと思うんですけどね。それよりも、尊敬できる人と働ければ良いです。1つの軸を決めてそこに対して譲れないものだけを追い求めれば良いんじゃないかなと思います。

< 了 >

ライター:澤山大輔