Forkwell Press

エンジニアの生き様をウォッチするメディア

インドのオフショア開発事情が赤裸々に!?【Global Engineer Meetup】を開催しました!

f:id:forkwell:20180419202112j:plain
2018年4月19日、株式会社SHIFT とのコラボイベント「【Global Engineer Meetup】グローバルに活躍するエンジニアへの路」を開催しました。

当日は、SHIFT でゼロから日印双方の開発チームを立ち上げた開発部部長の菅氏が登壇。 最新のインド事情の解説や、オフショア開発のメリット・重要性、開発チーム立ち上げ時の苦労話、グローバルに活躍するために必要なスキル・事前準備...などをお話いただきました。他所ではなかなか聞けない密度濃いトーク内容となり、参加者満足度は90%超! 本レポートでは、残念ながら参加できなかったエンジニアの方々に向けて、当日のトーク内容をご紹介します!


▼イベントレポートの目次

  • 登壇者
  • 菅氏 のトーク内容
    • なぜオフショア開発が重要なのか?
    • SHIFT India立ち上げ
      • 開発チーム立ち上げ〜現在までの流れ
      • チーム融合のステップ
    • グローバル時代に求められるスキルとは?
    • 最後に
      • 世界の開発スタイルの流れ
      • グローバル化の中で生き残るために
  • 懇親会の様子   

▼登壇者

f:id:forkwell:20180710141735p:plain:h250
株式会社SHIFT コーポレートディベロップメント本部 開発部 部長 菅正和 氏
ソフトウェアテスト支援ツール「CAT」の事業推進を担い、ゼロから日印双方の開発チームを立ち上げ、サービス全体の運営に携わる。2014年よりインド代表として駐在を開始し現在に至る。

▼なぜオフショア開発が重要なのか?

一般的には以下の2点が、オフショア開発を検討する大きな理由であると考えています。

1. 労働者不足

f:id:forkwell:20180710141731p:plain
(出典:経済産業省「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」
経済産業省の2016年のデータでは2020年東京オリンピックの前で約37万人、2030年には約80万人の IT人材が不足すると言われています。働き方改革が推進され、労働時間の削減に取り組んで行かなければならない中で、明らかに労働力が不足してきています。中小の開発チームが採用に苦戦し海外にリソースを求めていく、というのも自然な流れだと考えています。

2. グローバリズムへの移行

日本企業が世界各国に拠点を持つことは当たり前になりました。政府はTPPを推進、外国人労働者の受け入れ拡大に向け在留期間を10年に延長する方針を発表するなど、グローバル化は今後も進んでいきそうです。世界各国の企業との競争に打ち勝つために、どのように優秀な海外エンジニアと働き、どのように競争優位性を確保するのか、真剣に考える必要があります。

▼SHIFT India の立ち上げ

f:id:forkwell:20180419202357j:plain
SHIFT India は、マハーラーシュトラ州のプネにつくりました。 現在の従業員数は25名くらいで、CATの開発、テスト、サポートを行っています。 プネを選んだ理由は、インドで一番教育熱心である点。“東のOxford”と呼ばれ、日本語教育が盛んで、日本語検定を受ける人が多い街でもあります。

開発チームの立ち上げ(2012年8月)

立ち上げ背景

最初に取り組んだのは、当時Perl で開発されたCATをJavaで書き直すプロジェクトです。主に出張ベースでインドの立ち上げを進めていました。 チーム構成は、日本に駐在したことのあるインド人の PM 1人と、インドの US系企業で勤務していたエンジニアなど、僕を含めて計7人です。日本語を話せる者は2名という状況で開発をスタートしました。 日本側は共通部分とインフラ、機能設計、受け入れテストを担当し、インド側は詳細設計以降を担当して開発をしていました。

だいたい想像がつくと思うのですが、この最初のプロジェクトは…少し失敗、といったところですね(笑) 予定より約2ヶ月の遅延で完了しました。メンバーは大丈夫と言い続けていましたが、私が入らないと終わらないと判断し、途中から私がインドにステイして、プロジェクト終了までたどり着きました。

困った点
  • 各メンバーの実力が不明なので、見積もり精度がよくわからない
  • 現地リーダーを介したレポートだと状況が伝わってこない
  • できると言ったものの、できないことが多い
  • 日本チーム側が想像以上に疲弊する(英語の努力+育成の努力)

紆余曲折を経て、1回目の開発プロジェクトが終了。 以降も日本にいながらインドを見るという体制は変わらず、2年間ほど続けました。

その後
  • 製品を覚えるにつれて生産性は高まるが、アウトプットの質には不満足なことが多い
  • 時間を守る、約束を守る、守れなかったら連絡する、といった日本人が重視する”ビジネスの基本”から教えることを続ける。なかなか双方のチーム間で信頼関係が築けない

そんな状況に転機が訪れます。突然現地代表が退社することに。どんどん開発を行って製品を強くしないといけない時期だったため、私が現地に駐在してチームを再構築することになりました。そうして2014年12月、妻子を連れインドへ本格的に赴任することになります。

赴任後(2015年1月)

Good Point:実力が正しく把握できるようになる

現地で本格的に活動することでこれまで見えなかったものが見え、指摘できるようになりました。直接コミュニケーションをとることで実力が良くわかりますし、事業に対する熱意を伝えることができます。コミュニケーションの量が確保されることで、本音も話してくれるようにもなりました。

Skype 上の会話はコミュニケーションコストが高く、量が限られてしまいます。お互い距離感が残ったままで、相互理解が進みません。 インドのエンジニアの離職率は平均25%あるとも言われており、これは4年に一度、従業員が完全に入れ替わるという意味です。だからこそ、直接対話をし、能力が高いと思った人には、インセンティブを思いっきりガツンとあげて逃さない。そうすることで良い人材に確実に会社に残ってもらえるようになりました。このサイクルを繰り返し、組織を成長させることができました。これは駐在のすごく重要なポイントですね。

Bad Points:文化や環境の違いによる反発が始まる
  • 時間を守る、連絡することへの反発(欧米企業は結果しか見ないため)
  • 品質に対する認識の違いへの反発

前の社長のマネジメントスタイルを再構築しました。生産性を高めるために、時差を考えてできるだけ早く会社に来てください、約束は守ってくださいなど、まず基本からお願いすることにしました。ただし、結果を重視してライフスタイルは自由にさせるUS企業で働いてきた経験のあるインド人エンジニアの方には、なかなか理解して頂くことは難しかったようです。 一方、欧米系での就業経験が少ない若手の方達は、日本式を受け入れやすく、うまくやれていますね。この欧米式に染まっていない方を採用して日本式に慣れていただき、優秀な人材は抱え込んで…というグッドサイクルを見出してからは、これをずっと繰り返していました。

現在

現在は、相互の信頼関係構築に成功。フレキシブルな対応が可能になりました。 f:id:forkwell:20171007131036j:plain
今も開発はピークを迎えているのですが、私から何か指示を出さずとも、ほとんどのメンバーが自発的に納期にコミットして働いています。何も言わないのに土日や残業して働きますという報告がどんどん届きます。また品質に対する認識の差異も理解して頂き、届くアウトプットの品質レベルの底上げに成功しました。これは他のインド企業では考えられないようなチームと自負しています。

チーム融合のステップ

これらの経験を踏まえて、グローバル開発チームを作るには以下のステップがあると考えています。

Step1 無関心:お互いの環境を理解していない

メールやオンライン通話のみのコミュニケーションで、お互いが直接見えていません。何か不満や課題を見つけても解決する行動が生まれず、お互いが陰口だけを言い合う状況です。日本人からすると、「品質がわるい、納期を守らない」、インド人からすると「日本人は厳しすぎる」と。チーム力はほとんど向上しません。

Step2 融合:少しづつ環境の違いを理解し、直接言い合う

お互いの行動が見え、異文化のコミュニケーションの量が増えてきた状態です。背景の異なるメンバー間で反発が始まる状況です。ここを突破しないと次のステージにいけません。「クロスカルチャー人材」というのは、ここで重要になってくると思っています。

Step3 相互理解:チーム内のルールが定まり、新人が来ても自然に染まる

お互いの背景の違いを許容し、信頼関係が構築された状態です。信頼を得るには常に一貫した態度を持つことが重要です。

このようなステップがグローバルチームを作る上で存在し、Step3まで到達しないとなかなか成功とはいえないと考えています。もちろんビジネスの状況が起因することもあるかと思います。ただ、オフショア開発を諦める企業・人は、Step1 のまま諦めるケースが多いかなという印象です。異文化に踏み込めば踏み込むほどチーム力が強化される、これがオフショア開発の醍醐味だと私は思っているので、もったいないなあと思います。

f:id:forkwell:20180419203624j:plain

▼グローバル時代に求められるスキルとは?

オフショア開発をこれからやってみたい・成功させられる人材になりたい、と思っている方にとって、これからの時代に求められる求められるスキルを3つ選んでみました。

f:id:forkwell:20180419204453j:plain

1. 語学力

「融合」を始めるためには、まず対話がないと話になりません。対話をするためには語学力が絶対条件です。語学力を高めるためには時間がかかります。例え今500万円を払っても、明日から喋れるようになるということはありません。計画が重要になってきます。 世界で第二言語として選ばれることの多い英語は勿論、余裕があれば現地語習得にもチャレンジしましょう。

商社の場合だと、赴任前に1年間の語学留学をさせるそうです。現地語を習得させてから現地の社員にする、という一見して手間のかかるステップを取っています。給料も高く留学費用もかかるはずですが、その費用を払ってまでも、現地語を学ばせるステップを省きません。理由は簡単です。コミュニケーションがビジネス上、非常に重要だからです。私は、これはITエンジニアのオフショア開発においても言えることだと思っています。

2. 異なる文化を受け入れる力

実際に現地に飛び込んで、興味を持って、勉強する姿勢が重要です。 私はこの力を身に着けるのに、2年かかりました。現地に行き、メンバーとぶつかり続けて、「あのバックグラウンドを持つ人にこのお願いは難しい。許容するところは許容し、重要なところだけお願いしよう」と思えるまでに、2年かかったんです。 もちろん最初からフレキシブルに対応できる方はいらっしゃると思うので、そういう方にはこのステップはいらないと思いますが、今まで日本から出たことがない人や、ステレオタイプが強いなと自分で思う方は多少なりとも苦労されると思います。難しいのは、実際に現地に行かないとなかなかその訓練ができないかもしれないという点ですね。実際に現地で話をしてみて、ぶつかって、失敗することで経験値を積んでいくしかないのだと思います。

3. 高いビジネス意欲

たまに「東南アジアが好きなんです」「途上国が好きなんです」などの理由で、あまり責任感を持たずに海外に行く方もいらっしゃいます。ビジネスで赴く以上、事業で勝つための価値やアウトプットを出させなければなりません。現地のメンバーは私達のことをよく見ています。熱意やこだわりを持って仕事に臨む姿を見せないと、気を抜いた態度で彼らも接してきます。強い意志を持ったリーダーの存在は、プロジェクトの成功に欠かせません。

▼最後に

「グローバルからみた日本のソフトウェア開発の今後」というお話をさせていただきます。

世界の開発スタイルの流れ

欧米企業はアジャイルプロセスや各種ツールをオフショア開発に適用し、競争優位性を確保しています。いまやシリコンバレーで働く約30%はインド人とも言われ、彼らがインド国内のエンジニアとUSチーム間のブリッジとなり、大量の優れた開発リソースを獲得しています。

一方、日本では、少子高齢化による深刻な採用難、働き方改革により労働時間の厳罰化が進みリソースの確保が困難になってきています。その上、請負構造や質を重視する体制が残っており、ソフトウェア開発に対する要求は年々高度化しています。 日本のソフトウェア開発の環境は非常に深刻になってきています。

グローバル化の中で生き残るために

日本は本格的な環境の変化が始まっています。従来のソフトウェア開発をそのままを続けていたら、競合企業に取り残されてしまうと、ひしひしと感じてます。日本市場向けには「高品質を望む顧客の期待に適うモノを、コストを下げてどう作るのか?」、またグローバル市場で勝つための圧倒的な開発量、開発スピードどのように確保して戦っていくかを、真剣に考えていかなければいけない状況です。

オフショア開発は、このような状況下で競合に打ち勝つための重要な戦術の一つです。このような場で、情報交換やディスカッションを行い、どのようにこの先を生きていくかを、考え続けるきっかけにしていただければと思います。

オフショア開発への一歩を踏み出すためには、まず、一次ソースを確保することをお勧めします。つまり、実際に海外に行って、感じてくる、ということです。今ならLCCなどもありますので、5,000円〜1万円で東南アジアに行ける時代になっています。ムンバイやデリーであれば、最安値で往復5〜6万円で行ける便もあります。土日を使って、渡航してみるのも良いかもしれません。 10年、20年後を予想して、自分がどうやって生きていくべきかを自分で判断する。こういう行動が、我々ITエンジニアにも求められる時代になってきているのではないのかと思います。

f:id:forkwell:20180419205907j:plain


▼懇親会の様子

白熱したQ&Aの後は、懇親会へ!
インドにちなんで、タンドリーチキンやカレーパンが並んでいました。

f:id:forkwell:20180419211403j:plain

懇親会中にも、積極的な質問が飛び交い大盛況! f:id:forkwell:20180710144137j:plain

開催後のアンケートでは

  • インドで働く大変さ、楽しさを知ることができました
  • 具体的に現地法人の長を勤められた方のリアルな声が聞けたのがよかったです
  • 失敗した話など、赤裸々にお話していただき、とても説得力のある講演でした

...など、ありがたいお言葉をいただくことができました。


インドオフショア開発の実情に迫るイベントレポート、いかがでしたでしょうか?
今後も、皆様のキャリアや出会いにつながるような内容でイベントを開催予定ですので、お楽しみに!

文責:Forkwell 運営事務局