自分で手を動かしたい思いがありました
――冨永さんのご職業である「BIエンジニア」、具体的にはどんなことを行なう職種なのですか?
冨永 私はBIエンジニアのチームにはいるんですけど、現在やっている仕事はPHPを主な開発言語で使って、バックエンド側の仕事をやっています。
具体的な業務内容は、1つが「データコンバート」です。弊社はいろんなECサイトを保守していまして、またそれらが色々な外部システムと連携しているのですが、それぞれデータの構造が異なっているんですね。CSVだったりJSONだったり、形式も違えば項目名も違う。そこで弊社の扱っているデータコンバートのシステムに投げさえすれば、うまくデータをコンバートして繋いでくれるシステム、それの保守・開発に関わっています。
BIエンジニアとしてやっていた仕事は、機械学習などを活用するチームでした。ただ、今はどちらかといえばECサイト側の保守ですね。
――この職業を志される前に色々な背景があったと思うのですが、大学はどちらを専攻されていたんですか?
冨永 九州大学の出身で、専攻は工学部建築学科です。学科にいるときは建築の全般を学び、大学院に進学してからは建築の音響を専攻していました。研究したのは、騒音制御です。例えば、タイヤと道路がこすれる音などで交通騒音が発生するとして、その音が住宅街にどの様に伝わっていくのか、どの様に減衰していくのか。そういった研究をしていました。
――研究ではどういうことをやられたんですか?
冨永 「半無響室」に模型をたくさん用意して、そこで実験を行ないました。半無響室というものを説明しますと、要は音は外だと空に消えていきますよね。それを小さな部屋で表現するためには、「床からは音が跳ね返ってくるけど、空と壁からは跳ね返ってこない」という状況を仮想的に作る必要があります。
作り方としては、壁と天井に綿のような素材(吸音材)を詰めて吸収させます。その半無響室で模型実験を繰り返し、「こういう伝わり方をしているから、こういった計算式をすれば音の伝搬は予想できるんじゃないか」といった実験をしていました。
――計算式ということは、数学の知識も必要なんですね。
冨永 そうですね。その時もプログラミングを触ってはいまして、Fortranというすごく古い言語を使って取ったデータを分析していました。
――大学院も含めて音響の研究をされて、一社目ではお仕事に繋げてらしたんですか?
冨永 一社目は2014年、JR九州に技術系の総合職で入社しました。騒音の研究をやっていたので、鉄道の騒音問題に関し知識が役立てられるのでは、と思ったんですね。ただ、実際のところその局面はあまりなかったですね。「デベロッパーとして建築に関わる仕事をやる」という採用だったので、想定どおりではあったのですが。JR九州には、2017年9月まで勤めました。
――3年間どういったお仕事をされたんですか?
冨永 自分のいた部署は事業開発部というところだったのですが、例えばJR九州は様々な子会社を持っているんですが、そういったものを建築するときの企画・管理をやったり、「こういったコンセプトで」とゼネコンさんや設計会社さんとお話ししたり、基本設計という最初のイメージを作って渡したりしました。
――手を動かす仕事とは違うかもしれないですけど、すごく面白そうですね。
冨永 そうですね、面白いのは面白かったです。ただ3年経って強く思ったのが、「自分自身で手を動かしたい」ということです。JR九州は大きな予算を動かせる部分などやりがいは大きかったんですけど、やはり自分の手を動かして何かを作りたいなと。
あるとき、新規事業開発でITの技術に触れることがありました。オプティムさんという会社の「農業×IT」を掛け合わせる仕事で。ドローンを飛ばして小作物の写真を空から撮り、機械学習で画像を分析し、農作物に病気が出たり害虫にやられていないかの判断をするなど、農業を効率化させていたんです。それを見て、「機械学習をやりたいな」と思ったんです。
――機械学習はかなり数学的な素養が必要だと伺いますが、研究テーマを考えると冨永さんには非常に合ってらしたんですね。
冨永 そうですね。「やっていることは似ているな」と感じました。
スピッツ、大好きです。
――カラビナテクノロジーさんには、どういう経緯で入社されたんですか?
冨永 Wantedly経由で応募しました。「エンジニアにやりたいことをやらせている会社だな」という印象を持ったのが大きいですね。あとは、ただ手を動かすだけでなく、全体的に関わりたい思いがあって。カラビナテクノロジーではそれができると思いました。当時、弊社は機械学習の人材を求めていたのでそこでもマッチしたと思います。
――面接でどういう話をされましたか?
冨永 普段どんな勉強しているか、前職の仕事に不満があるのか、なぜうちを志したのかというところですね。未経験での入社だったのでいったん課題を与えられて、機械学習の分野には様々なアルゴリズムがあるので「何かしらを勉強して私たちの前で発表してくれ」という課題をもらいました。
ランダムフォレストというアルゴリズムがありまして、そちらについて書籍で勉強して、「こういったアルゴリズムです」という説明をしました。後から聞いたら「学習意欲があるか否か」を見ていたそうです。実際この分野、勉強し続けないと難しいと思っています。
――入社前後で、イメージの違いはありましたか?
冨永 「IT土方」という言葉があるように激務なイメージを持っていたんですけど、カラビナテクノロジーはプライベートな時間をとても大事にしてくれています。とはいえ、インタビューしていただいた弊社の川上は、プライベートで勉強するぐらいやる気を持っている人間です。彼のような人材に触発され、私もプライベートを確保しつつ勉強しています。
――冨永さんはバンド活動も並行してやられているそうですが、今の会社に合ってらっしゃるんじゃないですか?
冨永 そうですね。前の会社は副業禁止だったので。バンドって、副業なのか否か掴めないところがあるんですよね。売れていてもいなくても、CDを出そうと思ったら副業になってしまうだろうなと。
――難しいですよね。売れたら、完全に副業になるわけですからね。
冨永 そうなんですよ。
――バンドはいつからやってらっしゃったんですか?
冨永 大学4年の時からなので2012年からですかね。今年で6~7年目ぐらいだと思います。もともと大学のサークルに所属していたんですけど、あまり趣味が合わなかったのですぐ辞めてしまって、知り合いからバンドに誘われてやり始めました。大学1年の頃からベースをやっています。
――ボーカルやギターじゃなくベースに行かれたのは理由があるんですか?
冨永 兄と父親が2人ともギターをやっていたのがあって、一緒は嫌だったんです(笑)。あとは、裏方のほうがかっこいいなという憧れもあって。いるときは全然わからないけど、いないと物足りなくなってしまうところがかっこいいなと思って。
――好きなベーシストはいますか?
冨永 レッド・ツェッペリンというバンドのジョン・ポール・ジョーンズが好きです。もともとハマったのはツェッペリンで、ほかはスピッツもすごく好きです。実は小・中学校とスピッツのボーカル(草野マサムネ氏)と同じところだったんです。30周年記念で草野さんが寄稿してくれたりということもありました。それがきっかけですごく好きになって、今でも聞いてます。
――スピッツって、バンドをやってる人とやってない人で評価が違いますね。やっている人はみんな「スピッツすごい」って言ってますからね。
冨永 全員うますぎますね。ベースの田村さんも、鬼のようにうまい。すごく参考にしてます。
――ライブ活動も頻繁にやられてるんですか?
冨永 しばらく活動が大人しかったのですが、最近仕事にも慣れてきましたし、ぼちぼちまたしっかりと活動したいなと。
ちなみに『23℃』っていうスリーピースバンドなんですが、どっちかというとゆるめの音楽やってまして、何とこちらのサイトから試聴と購入が出来ますんで、よければ聴いていただければ、というかぜひ購入していただければという感じです。何卒!
モットーは「違うことを恐れない」。
――業務を行なう上で大事にしているモットーや、好きな言葉があれば教えてください。
冨永 「違うことを恐れない」ですね。 是川銀蔵さんの言葉で、「世の中の皆が黄色というなら、阿呆になって白を買うべし」みたいな言葉があって。
例えばJR九州を辞める時も、親族や友人から「もったいないよ」と言われたんです。でも、自分のやりたいことを大事にしようと思って、阿呆に(笑)なりました。親からは「せっかく安定した大きな職場に勤めたんだから」と言われだいぶ悩んだんですけど、最終的には自分のモットーを大事にしようと思って。最終的には「お前のやりたいことをやれ」と受け取ってもらいました。
――実際、JRって特に地方ではかなり大きな企業ですよね。
冨永 地元に残りたければ、堅い企業だなと思います。両親もずっと九州の人間だったので、「地元の大きい企業に行けば安泰だろう」という考えだったので。
――自身の成長のために日々行なっていることはありますか?
冨永 とにかく外でアウトプットすることですね。これは弊社川上と、今はGMOペパボにいる鶴田という人間から助言をもらったのですが。福岡でやっている勉強会に興味があったら発表者として登録して、月に1回は発表していこうと。それを自分に課題として課しています。
――発表の準備ってどれぐらいかけるものなんですか?
冨永 一応、日々勉強したことをその発表で発表しようという方式でやっています。そのため準備は特にないんですが、勉強したことを1日ぐらいでまとめて発表していくやり方をしています。アウトプットも、業務と関係ないことが多いですね。もともと音響の人間だったので、例えばプログラミングで音声信号をいじって調整するとどうなるといったテーマで発表しています。
――スティーブ・ジョブズが言っていた「Connecting The Dots」じゃないですけど、急に何かで業務につながるかもしれないですしね。
冨永 つながればと思いながらやってますね。
――業務に役立てるために勉強をしていることはありますか?
冨永 1つは未経験から入ったので、そもそも言語についての理解が他の人に比べて浅いと思っています。なので、日々コードに触って言語に慣れるよう心がけています。Pythonと業務で使っているPHP、それから最近はGoを勉強しています。コンパイラ言語を学びたいけど今からC言語を勉強するモチベーションはなくて、そこでGoを勉強してみようかなと思いました。
自己投資のために、お金は重要です
――ここからは、冨永さんが働く上で大切にしていることについて、「事業内容」「仲間」「社畜度(会社愛)」「お金」「専門性向上」「働き方自由度」の6つの項目から合計20点になるよう、点数を振り分けていただきます。
・専門性向上 5
尖った知識や技術持っている方は面白いと思うことが多くて、僕もそうありたいと考えています。会社としても尖った人間が集まって、長所を活かしてプロダクトを作ったり仕事をした方が面白いことができるんじゃないかなと思ってます。
――尖った技術でいうとどういうものがありますか?
1つは、今勉強している音響ですね。大学で学んだ知識を活かせる分野なので、自分の武器にしたいなと思っています。
・仲間 3
やる気のある仲間、特定分野に尖った仲間を見ているとモチベーションが上がります。話していて楽しいので、大事だなと考えています。
・お金 4
お金があればもっと自己投資できて技術を高められますし、普段の生活環境も豊かにできるので。そういう意味で大事だと思っています。
――自己投資という文脈でいうと、最近どういうところにお金を使われました?
書籍ですね。技術書とか1冊3,000円くらいするので、月に何冊か買うとやはりお金があった方が気兼ねなく買えるし、読みたい時に読めるなと。最新技術に触るのにもお金が要ります、例えばVRだとかドローンとか。そういうものを集めるのにもお金が必要ですね。
・事業内容 2
今やっている仕事が社会のどんな問題を解決するか、というのは全然考えていないですね。どんな仕事をやっていても、やりようによっては面白くなると思うので。
・働き方自由度 4
今の自由な環境で仕事をしていて、楽しいなという実感があって。自由度は大事なんだろうなと思っています。意見を言って採用されたり、あるいは「違うよ」と議論ができるというのは楽しいですね。
・会社愛 2
何点にするか難しいなと思ったんですけど、今の会社は好きですよ。よくしていきたいなとは思っています。ただ、尽くしたいかと言われるとそうは考えないなと。あくまでまず自分が大事、その後に会社かなという感じで。
自分を信じて正解だったなと思います。
――転職を志す方にメッセージをお願いします。
転職するときに両親から猛反対されたというのもあるんですけど、自分を信じて正解だったなと思います。自分が何をしたいのかを整理して、それに素直になった方がいいと思いますね。
――転職するって決めてから転職決定までどれぐらい時間ありました?
前から考えてはいたんですけど、動き出してからは2ヶ月ですね。
――周りから何を言われても、自分の信念を通したと。
そうですね、自分なりの回答ができるような用意はしていたんですけど。自分に素直にいたいという感じです。
<了>
ライター:澤山大輔
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