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「社会の負を、技術で解決できるエンジニアでいたい」池田雄太郎(株式会社Kaizen Platform)〜Forkwellエンジニア成分研究所

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短期間で、社内MVPを3回受賞した経緯

――まず、池田さんの現在の業務内容について教えていただけますでしょうか。

池田 今はKaizen Platformという会社にいます。社内の肩書としては「アプリケーションエンジニア」なのですが、一般的には「機械学習エンジニア」や「データサイエンティスト」と呼ばれるような仕事をしております。主な業務は「統計的なデータ解析およびその基盤の構築」です。Kaizen Platformのサービスはお客様のサイトにタグを入れてもらってログを取得させていただくのですが、ログを取得するスクリプトの開発もしています。

Kaizen Platformには2018年4月に入社しました。様々な種類のログが膨大にある一方、すべてが活用されていたわけではなかったこともあり、入社後すぐに「こういう解析ができるんじゃないか?」と考え、実行した解析がいくつかあります。例えば、クリックログやスクロールログを使ったヒートマップを作成することによるユーザー行動の可視化、グラフネットワークを使ってユーザー行動を表現するなどです。そういうものを取り入れ、お客様の課題を可視化して提案したら、月間MVPをいただきました。

その後、社内からの依頼が想像以上に増えたんですね。これだと私1人では対応することが難しいと判断し、アドホックに行なっていた解析を抽象化して、社内の他メンバーでもそれらの解析ができる環境を構築する、というプロジェクトを始めました。まずは、自分や他のエンジニアが使える社内ライブラリ化をしました。それと同時に、ログ関係のドキュメントが最新版になっていないという課題もあったので、すべて最新の情報にまとめ直しました。そういった環境の整備が、社内での解析のスピードアップや事例の増加に繋がり、上半期MVPをいただきました。

最近は、対話的にPythonやRのプログラミングが行えるJupyterというソフトウェアがあり、さらに認証を行えるようにしたJupyterHubというソフトウェアがあります。今回のデータ解析基盤の構築にはJupyterHubを使っていて、Kaizen Platformではエンジニア以外のカスタマーサクセスの方もJupyterHub上でPythonで書かれた社内ライブラリを使って解析を行っています。

エンジニア以外のメンバーが使えるようにした工夫点がいくつかあります。 1つは設定項目の少なさです。通常は解析を行うには、例えばユーザーセグメントや期間などコンテキストにあたる様々な情報が必要なのですが、社内のデータベースから上手く情報をひっぱってくることで、最小限の設定項目で解析が行えるようにしています。

――Kaizen Platformは、どのようなサービスを提供している会社なのでしょうか?

池田 サービスは現在2つあります。1つは、WebサービスのUI改善を実現する「Kaizen Platform」というサービスです。創業当日は、A/Bテストツールの提供からスタートしましたが、現在は「課題の分析からUI/UXの課題と仮説設計」「グロースハッカーがプラットフォーム上で改善案を提案」「テストを実施し、成果のでる案をベースとして改善活動を繰り返す」等、事業成長に欠かせない改善活動をトータルサポートのできるマーケティングチームを提供するプラットフォームとなっています。

もう1つは、「Kaizen Ad」という、モバイル広告を動画クリエイティブでPDCAして改善するサービスにも力を入れています。最近は動画広告の市場が拡大しており、静止画を動画化し、企業の事業成長を支援するサービスとなっています。動画制作は当社のプラットフォームに登録している全国のグロースハッカーの方々に制作してもらっています。

Kaizen Platformのサービスすべては「雇用契約を前提としない21世紀の新しい働き方と雇用の創出」という経営理念に基づき考えられています。中長期的には、企業の事業成長に必要不可欠なマーケティング専門チームはKaizen Platformにお願いすれば調達できて成果もでる、というプラットフォーム開発を実現することにより、様々な才能を持った個人が自分ひとりでは出逢えない仕事やチームとコラボレーションし社会貢献できるという世界を創造したいと思っています。

――Kaizen Platformには、アプリケーションエンジニアとして入社されたんですか?

池田 そうですね。Kaizen Platformのエンジニアはバックエンド、フロントエンド、データサイエンティスト、全員が「アプリケーションエンジニア」として活躍しています。全員が役割を制限することなく、サービス成長のために必要な技術はどの領域でも限定することなく進化し開発を推し進めるチームでありたい、という思想を反映して、全員がアプリケーションエンジニアという肩書となっています。そのため1人ひとりの守備範囲が広く、枠にとらわれないアサインとなっており、自分で仕事を取りにいくスタイルで働いています。

最近は、ログを取得したデータを元にお客様の経営課題を発見して実際の提案内容をカスタマーサクセスと共につくったりもしています。やっている仕事は必ずしもエンジニアリングだけということではないかもしれないですね。

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あるアプリをすべてPythonに書き換え、100倍の速度に。

――池田さんは、筑波大学の客員研究員に名を連ね、今も在職中なんですね。大学は筑波大の社会工学を卒業されて、大学院ではシステム情報工学を卒業されてLIFULLに入社されました。LIFULLに入社した段階で、筑波大から籍は離れられたんですか?

池田 離れましたね。1、2年目は仕事に集中したかったですし、あまり余裕もなかったので。3年目の4月から、正式な研究員になりました。

――LIFULLでは、どんなことをやられてたんですか?

池田 HOME’Sという不動産サービスが1番有名で、最初はHOME’Sの改修をしていましたが、1年目の終わりぐらいから民泊サービスのエンジニアをしていました。外注先企業とやりとりしながら全部作っていきました。その後は、新規事業の部署に異動し、機械学習アプリケーションの開発に関わりました。

その中の1つが、過去の不動産データから現在の価格を推定して地図上に表示する機械学習のアプリケーションで、個人的には一番思い入れのあるサービスです。私が最初に入った時には、すでに機械学習のモデルはあったのですが、研究所に委託して作られたもので、全てRで書かれており、あまり実用的には作られていませんでした。例えば1つパラメータをいじって結果を出し直すだけでHOME’Sに蓄えられている大量の過去のデータを使っていたのもありますが、24時間くらいかかってしまい、大変非効率でした。この時点でAWSの結構よいインスタンス6台で24時間、しかもエリアとしては1都3県のデータだけでそのくらい時間がかかっており、その後控えていた全国展開を考えるとそのモデルを使っていくことは現実的でないので、新卒2年目のときに実用性を重視したモデルに全てPythonで書き直しました。その結果100倍程度早くなり、最大10分程度で終わるようになりました。

その後、関西/中部エリア対応、福岡対応とそのモデルを使っていたのですが、全国対応を行うにあたり、首都圏用に作ったモデルを地方のエリアにそのまま適応することが難しい、という問題にぶつかり、改めてモデルの抜本的なリプレースを行いました。そのモデルは今でも動いており、今までのキャリアで費やした時間も長いので思い入れのあるサービスですね。

―― 新卒入社後すぐに2度の大きなリプレイスをお1人で担当されたんですね。MVP獲得も納得です。

池田 私は学生時代からバリバリ開発をやっていたわけではなく、どちらかというとアルゴリズムの研究をしていたんですよね。そういうバックグラウンドもあり、ソフトウェアエンジニアになって最初は何から取りかかればいいかわからず、1年目はあまり大きな行動ができていなかった様に感じます。ここまででお話したチャレンジは2年目以降に少しずつ自信がついてきて徐々にできてきたのかな、と思います。今振り返ると、右往左往しつつも、気になったことには最初からもっと積極的にチャレンジすれば良かったなと思います。これから社会人になる方は、臆することなく入社したその日からどんどんチャレンジすることをオススメします。

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困っている人がいて、解決できる技術があるのに使われていない。

――2017年6月から筑波大の客員研究員もやられているとのことですが、こちらはどのような研究をされているんですか?

池田 メインのテーマとしては、臨床心理学に統計学・機械学習の手法を取り入れて既存の問題を解決していくようなことをしています。例えば、SNSの情報を使って精神的に助けを求めている方を特定するなどです。取り組んだ研究の1つとして、Twitterをテーマにしたものがあります。「ウェルテル効果」というマスメディアの自殺報道に影響されて自殺が増える効果と「パパゲーノ効果」という精神的に立ち直った方をきちんと報道していくことで自殺を減らせるという効果があります。「ウェルテル効果」は拡散されやすく「パパゲーノ効果」は拡散されづらいという既存研究があったのですが、これが現代のSNSでも成り立っているのか、ということをSNSのクローリングと自然言語処理で検証しました。将来的には「ウェルテル効果」を含むツイートが拡散されづらい仕組みなどをつくることを想定しています。

もう1つ最近取り組んだ研究として、NIRS脳計測装置という、近赤外光を用いて脳の活動を測定し、精神疾患などを測定できる装置があるんですが、測定の最終的な判断は人の目で見て行われていたんですね。それを自動化できないか、というモチベーションで、DeepLearningのモデルを構築し代替するという研究を行っていました。

まだまだ、データ活用されていない分野はたくさんあります。特に私が関わっている分野は人命に関わる分野にも関わらず、技術で解決できることがあるのに手をつけられていない。そこを自分が関わって助けたい、なんとかしたいと思っています。

――特定のパターンの人と病気の関連性がわかるなら、「こういう脳の血流の人だと、鬱になりやすい」ということもわかったりするんですか?

池田 そうですね。危険感知というか、本当に危ない人には処置をしなきゃいけません。例えば「いのちの電話」というNPOがあるんですが、30回かけて1回も繋がらないこともあるんです。でも、その電話をかけてきた方の中でも緊急度があって、優先順位をつけられれば救える人が増えるかもしれない。そういう仕組を作っていきたいですね。

――「いのちの電話」にかけてきたという事象だけで特定することは可能なんですか?

池田 今は電話をかけてきた段階でしか危険度はわからないのですが、例えばLINEのbotを使って心理テストをして、スコアの点数が高い人を優先的につなぐというようなことは、本当はできるんです。ただ、個人でやるのは難しいので大学などと連携したほうが良いんですよね。

――仕事や研究を行なう上で、大事にしているモットーや好きな言葉があれば教えてください。

池田 社会の課題や負の部分を、技術や科学で解決できるエンジニアでいたいと思っています。目の前で困っている人がいて、解決できる技術があるのに使われていない。そこに憤りを感じています。

あとは性格的に飽きっぽくて、映画やスポーツなども好きなのですが、どちらかというと、まだ誰も知らないものや未知なるものを解明することへの興味関心のほうが高いです。

例えば、人間の心は正に未知なるものですよね。Kaizen Platformでユーザー行動分析をしていると、最初はなぜかわからなかったユーザーの離脱している原因が特定の行動パターンを見つけることによってわかるようになったりします。それがわかった時に大きな喜びを感じます。

また、心理療法の1つに「箱庭療法」という、砂とミニチュアを使って患者さんがストーリーを作っていくことで、自分の精神状態を自覚、改善できる療法があるのですが、これは学問によって人間の心が少し明らかになった例と言っていいと思っていて、初めてこの療法を知った時は驚きました。

機械学習でもGANというDeepLearningのモデルの1つを使った画像生成技術の発展には驚かされています。例えば人間の顔の画像を大量に学習させ、現実には存在しない人間の顔を生成できたりするんですが、実際にやっていることは、「人間の顔の画像を生成する確率分布を推論する」ことで、人間の顔も確率分布で表現できるんだ、と初めは衝撃でした。

人生の目標としては、人間の心や自然を少しでも解き明かし続けていたいと思っています。 そのためには様々な学問の知識であったり、技術が必要になるので日々精進して少しずつ前進していきたいです。私が目標にしている人間の心や自然は私たちが生きているうちにすべては解き明かされないと思うので、死ぬまで飽きないと思います。

――ご自身の成長のために、日々行なっていることがあれば教えてください。

池田 2つあります。1つは、友人たちと「週報仲間」をやっています。slackのチャンネルで「今週これをやるよ」と書くんですね。私の場合は「ブログを書く」「英語を勉強する」などを書いて、週の終わりに「できた/できない」を報告し、毎週日曜日にレビューしてもらいます。友人みなが見ているので、かっこ悪いところは見せられない。仲間からのよいプレッシャーによって、自己成長を促すことができているので、うまく作用していると思います。

もう1つは、昨年からハマっているオンライン学習サイトのCourseraです。 アメリカの有名大学の教授や、一流企業のトップサイエンティストが授業をしてくれて、課題も出してくれるんです。6週から10週程度のコースが多く、たとえば比較的有名なStanford大学が開催している「Machine Learning」というコースは修了するとStanford大学から認定された修了証をもらえるのでモチベーションにも繋がります。

機械学習やコンピューターサイエンスのコースを昨年から8個受講し、修了しました。講座1つひとつの内容はなかなかハードで、8個修了したのは我ながら頑張ったかなと振り返っています。また、英語の勉強にもなります。難易度は高いと思いますが、その分修了した際の達成感や学びは大きいです。

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Kaizen Platformに入って、仲間の大切さに気づいた

――ここからは、池田さんが働く上で大切にしていることについて、「事業内容」「仲間」「会社愛」「お金」「専門性向上」「働き方自由度」の6つの項目から合計20点になるよう、点数を振り分けていただきます。

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・専門性向上 5

最終的なゴールは先に述べたものなので、MAXですね。今後も追求していきたいです。

・仲間 4

Kaizen Platformに入ってから、仲間の大切さに気づきました。やはり「背中を預けられる」感覚を持てるチームがあるというのはすごく重要だと実感しています。仕事は個人で完結することは少なく、必ずチームで行うものだと思うのですが、、チーム自体が安心できるメンバー・環境でないと自分のやるべきことに集中できません。Kaizen Platformは、1人ひとりが専門性高く、チームでコラボレーションしやすい風土があり、自分の仕事や専門分野をより高めることができる環境です。

あとは、出逢えるエンジニアのレベル感の変化はKaizen Platform入社後の収穫の1つです。

仕事で行き詰まった際に、エンジニア同士で話して解決する方もいらっしゃると思うのですが、私もよくエンジニア同士の繋がりに助けられています。Kaizen Platform入社後は今まで出逢えなかった層のエンジニアと知り合うことができ、大変刺激を受けています。

「類は友を呼ぶ」原理で入ってくる情報の質もレベルアップできたと感じています。

・お金 2

お金については特にこだわりがないです。お金で得られるものは二の次だと思っていて、未知のものを解き明かした結果、最後についてくるものだと思っています。チャレンジし続けるためのガソリン的な意味では必要最小限は必要かもしれないですけどね。

・事業内容 2

事業の方向性ってざっくり分けると2つあると思っています。ゼロをプラスにするものと、マイナスをゼロにするものです。ゼロをプラスにするのは、エンタメやゲームなどのサービス。マイナスをゼロにするのは、社会の課題を解決するサービス。私は、後者の方向性であれば特に分野などは限定していません。困っている人はどこにでもいますし、どの仕事にも価値はあります。大事にしたい方向性さえ合致していれば、何でもチャレンジします。

・働き方自由度 4

最終目標の「未知なるものを解き明かす」ための勉強や研究にも時間を使いたいと思っています。そのため、結構高めですね。Kaizen Platformは、自己管理さえできれば、裁量を持って働くことのできる環境で、リモートワークも1つの手段として取り入れることができます。

――個々人に割り当てられた仕事をこなしていたらいつ、どこでやっても良い文化なんですか?

そうですね。上司への報告なども、仕事が終わっていれば基本的には必須ではないです。私にはフィットする環境だなと思います。

一方、上司からの的確かつ細かい指示を受けて「タスクを完了させる」仕事の仕方ではなく、自分が取り組むプロジェクトや業務で「成果を出す」ことが求められるので、自由度が高い分だけ厳しい側面もあります。こういった環境に合う方と合わない方はいるかとは思います。

・会社愛 3

難しい観点ですね。フラットなので3にしました。Kaizen Platformは、会社という単位にとらわれない働き方を実現するプラットフォームの開発をしていますし、会社自体もそういう働き方にチャレンジしています。私は、会社は1つの形式にすぎないという考え方なのですが、その点がKaizen Platformとは合致しており、そういう思想が好きなので3点です。

――最後に、転職を志すエンジニアの方にメッセージをいただけますでしょうか?

これからどんどん今までの働き方という概念が変わっていく時代だと思います。会社にとらわれない働き方になっていくと思いますし、エンジニアという仕事は正しく実力をつけ、エンジニアリングによって世の中の課題を解決できれば評価される世界だと思います。技術はもちろんのこと、技術の力で社会やビジネスを改善し進化させることのできる力を身につけることが重要だと考えます。そのためには、躊躇なく挑戦と失敗ができる環境のほうが早く成長できると思うので、そういう環境を選択されるのが個人的によいと思います。

<了>

ライター:澤山大輔


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