南アフリカの仲間と、リモートで起業しています
――現在の業務内容について教えてください。
Raphael Megzari(以下、ラファエル) UNIONという金融関係の小さいスタートアップで、CTOをやっています。2人でスタートアップをしていて、1人は営業を、ボクはゼロから開発を行なっています。プロダクトとしては、元金融のプロが簡単にファンドを作れるようなミューチュアルファンド、ヘッジファンドの代わりのツールをElixirとPhoenixを使って作っています。
かなりニッチな世界で、業界内での競争は少ないので、ビジネスができるかトライしているところです。開発を始めたのは今年の1月で、クリスマスまでに給料が出ることを目指したいと思っています(笑)。
――かなりスケールが大きいプロジェクトですね。
ラファエル 今回のプロジェクトで難しかったのが、やはりお金を扱うところ。通常のスタートアップより完璧な商品を出さないと進められない、ということですね。スタートアップでは2カ月でプロトタイプを出し、その後は改善を繰り返す進行が普通だと考えていたのですが、今回は8カ月経ってもプロトタイプを作ることができませんでした。
――一緒にビジネスをされているのは、どこ出身の方なのですか?
ラファエル 4年前に東京で出会った、南アフリカの方です。ビジネスを始めるタイミングで連絡をもらって、一緒にやることになりました。彼は南アフリカ在住なので、仕事のやり取りは完全にリモートです。毎朝1時間、午後に1時間、仕事の整理と報告のために電話でコミュニケーションをとっています。開発はまとまった時間がないと進められないため、10分ごとにミーティングとかがあると苦しい。このやり方だと朝に電話して、その後一日開発に費やし、最後に報告するというリズムになるので集中できます。
――ラファエルさんは現在、どちらにいらっしゃるんですか?
ラファエル 今はバルセロナにいます。東京より物価が安いですし、月5,000円で毎日ヨガに行けます。良い場所です。生活の拠点は東京ですが、東京にいるといろいろ友達に声をかけてもらったりして楽しいのですが、たまに誰も知らない土地に行って開発に集中する時間を作っています。開発にのめり込んで、出てきた課題をまた次の日クリアして、山場を越えたら東京に戻るルーチンを繰り返すのがいいのかなと思います。
――ご自宅はどちらなんですか?
ラファエル 東京は、白金台の真ん中にあります。セレブっぽく聞こえますが家賃はかなり安いところです。3週間くらい空けても痛手にならないですね。海外に行くときも友達の家に泊めてもらったりして、節約できるように努めています。
――大学までは、ご出身のフランスの教育を受けられてきたのですね。
ラファエル 大学はフランスの「エコール・サントラル・パリ」で、数学をメインで勉強しながらコードを書いていました。エコール・サントラル・パリはフランスの理系大学で、上から3番目の大学です。フランスでも日本と同様に、理系・文系というようなくくりで大学を選択します。
――日本では理系文系の区別がネガティブに語られることも多いですが、フランスでもそのような問題はありますか?
ラファエル ありますね。文系は理系知識が全くない、理系はコミュニケーション能力が低すぎる、といったことが問題になっています。フランスでは新卒のエンジニアと、5年程度社会に出てコミュニケーション能力を向上させたエンジニアとでは、技術レベルはさほど変わらないのに、技術を売り込むコミュニケーション能力の差によって収入が変わるというのが普通ですね。
メールやSNSは、昼までアクセスしない
――今までのお仕事の経歴も伺えればと思います。
ラファエル 一年ほどロンドンの金融の業界に行ってみたのですが、銀行は金融の縛りが強すぎてあまり好きじゃなかったんですね。その後は1年くらい上海で中国語を勉強して、自分の生き方を考えていました。
その頃、ロンドンのときにできた日本人の彼女と遠距離恋愛をしていて、その後日本で合流したんですが、結局ふられてしまって(笑)。負け犬みたいに帰るか迷ったんですが、日本にいつづけることにしました。日本語も喋れるようになっていなかったし、せっかくだし日本で起業してみようかと思って。
その頃ヨーロッパで流行っていたサラダバーを日本で作ってみようとしたんですが、それがHappy Saladaです。ネットで好きなようにアレンジしたサラダを注文し、家まで届けるサービスです。月々600万ほど売り上げはあったのですが、コストも高くて大変でした。プロセスをマネジメントするのも大変で、あんまり楽しくなかったんです。結局は開発、機械学習に戻ろうと。スキルを磨いて、規模の大きいスタートアップに挑戦することにしました。
――業務を行なう上で大事にしているモットーや好きな言葉はありますか?
ラファエル 比較的余裕のある時期は、長期的に必要になるものを勉強することです。本を読んだり、フレームワークを勉強したり。短期的に結果が出るわけではないですが、長期に渡って役に立つものを半日くらいやることを意識しています。エンジニアは、常に勉強していないと命取りになってしまうので。
――集中力を高めるコツはありますか?
ラファエル メールやSNSは、昼までアクセスしないようにしています。前日に翌日のタスクを決め、やり終わるまでにはタスクに集中するようにしています。場合によっては返事をすぐしないといけないこともありますが、見てしまうといろいろ考えてしまって、大事なことを忘れてしまうんですね。最も大事なことを最初にやり、なにかトラブルがあってもとりあえず置いておくようにしています。
――ご自身の成長のために意識されていることはありますか?
ラファエル 自分のために働くということがすごく大事だと思っています。エンジニアは、自分で考えたものを自分でやって失敗することこそが勉強になる。他人のための仕事で失敗するのは、そんなに勉強にはならないんです。自分でイチから開発して失敗することからは、すごく教訓を得られる。金銭的には苦しい部分があっても、未来のためになると思います。
――日本語がとてもお上手ですが、どのように習得されたのですか?
ラファエル 一番うまくいったのは、常に仕事で使わなければならない状況に身を置くことですね。日本でエンジニアをやっていても、仕事場で英語で話して、夜だけ家に戻って日本語を勉強するのではなかなか上達しません。8時間仕事をやっている間に、常にしゃべらないといけない状況の方が絶対にうまくなる。
ボクもハッピーサラダをやったときに、日本語を話す必要があってうまくなりました。もちろん会社で毎日8時間やっても、家に戻って1時間くらいは単語とかを勉強しないといけないのですが。間を空けずに継続的に勉強するので、忘れるということもなくて覚えやすいですし。以前のパートナーが日本人だったのも要因の一つですね。共通の言語がないパートナーを作るというのは難しいですが、そこさえクリアすれば大きな勉強の機会になると思います。
命令されるままに仕事をやるのは最悪。
――ここからは、ラファエルさんが働く上で大切にしていることについて、「事業内容」「仲間」「会社愛」「お金」「専門性向上」「働き方自由度」の6つの項目から合計20点になるよう、点数を振り分けていただきます。
専門性向上 5
ボクにとっては、仕事で満足感を得るためには、毎日昨日より上達しているということが大事ですね。
仲間 5
もちろん開発は1人でするんですが、何を開発するか、何をするかは仲間によって違うので、意外と大事だと思っています。楽観的な仲間なら楽しく進められるし、頭が良い仲間なら仕事がうまく進みます。
今一緒にやっている人との関係は理想的です。ボクは具体的に考えるタイプなんですが、彼は未来のことを考えています。彼が「これから100億円の会社にするぞ」という野望を持っている一方、ボクは今月末に振込をされるためにはどうすればいいのか…と考えています(笑)。とても相性がいいです。
お金 0
今年は給料を1回ももらっていないので(笑)。しばらくお金がなくても未来のためになるので、無視してもいいんじゃないかと。月々20~30万円あれば、あとはいらないかなと思っています。
事業内容 5
エンジニアは、ボスからやれと言われたことはアホかと思っていてもやらなければならない仕事です。が、無理やりやっていると仕事がうまくいかなくなることにつながります。アホなことをやらないことが大事です。命令されるままに、やりがいも価値も分からずにやるのは最悪だと思います。
働き方自由度 5
信頼の問題などもあってリモートワークをやってない会社もありますが、信頼できる開発者さえいれば、リモートは大事だと思います。ボクもリモートで仕事をしますが、遅くまで寝ている人もいれば、早く起きている人もいる。それぞれのリズムに合わせて、無理をしない方が良いと感じています。
会社愛 0
会社のために働くというのは、定期的に仕事も給料も保証されるといった良い部分もありますが、ボクは自分のために働くということをおすすめしたい。自分のために働く方が勉強になることも多いですしね。
――最後に、転職を考えているエンジニアにメッセージをお願いします。
ラファエル まあ…独立せい! と言いたいです(笑)。少なくとも、試してみてください。絶対後悔はしないと思います。
――フランスには独立心が強く自由なイメージがありますが、実際ラファエルさんのようなフリーのエンジニアは多いのですか?
ラファエル いえ、そんなことはないですよ。国内のフランス人は全然英語を話せないですし、エンジニアも独立気質はそんなになくて、大きな会社の中にいたがる人が多い傾向があります。そのあたりはむしろ日本と共通した部分が多いのではないかと思いますね。
<了>
ライター:澤山大輔
Forkwell Portfolioは、エンジニア向けのポートフォリオサービスです。 Gitリポジトリを解析して、あなたのアウトプットをグラフィカルに可視化します。
Forkwell Portfolioのご登録はこちら!