Forkwell Press

エンジニアの生き様をウォッチするメディア

「朝起きたら、『すぐ会社に行きたい』と思えるような場所に。」公手真之(株式会社ラクス)〜Forkwell エンジニア成分研究所

f:id:paxigirl:20181203105231j:plain

マネージャーでも8割くらいはコードを書いていました

――現在のラクスさんの事業について教えてください。

公手 当社は中小企業に向けたクラウドサービスを提供しています。主要サービスは8つありまして、有名なものだとTVCMをやっている経費精算システムの「楽楽精算」、メール共有管理システムの「メールディーラー」などです。契約実績は累計5万社を超えています。2015年に東証マザーズに上場し、その後も順調に業績を伸ばしています。

――公手様は、どのようなお仕事をされているのでしょうか?

公手 当社のサービスはすべて自社開発していまして、全サービスの開発プロジェクトを私が統括しています。事業部のサービス戦略を早く実現するために、エンジニアのパフォーマンスが最大化されるよう組織をマネジメントしています。人材戦略を考えたり、他のマネージャーやエンジニアたちと相談しながら開発組織のロードマップを作ったりしています。

――複数サービスのマネジメントに関わる上で、難しさはありますか?

公手 サービスごとにマネージャーがいて彼らがうまく現場を回しているので、開発プロジェクトのマネジメントにそれほど難しさは感じないですね。ただ、それぞれがバラバラで動いていると非効率なことが多いですし、同じような苦労を全チームでやっても大変なので、業務の標準化や情報共有を推進するなど横串の機能にも力を入れています。

サービスにはライフサイクルがあり、成長期と成熟期では力の入れ方が変わってきます。限られたエンジニアのリソースをどう適切に采配していくかは結構難しい。あるプロジェクトでは優秀な人材への依存度が高かったりするので、育成でカバーして動きやすい状況を作らないといけません。教育体制を整備し、より柔軟性ある組織にしていく必要があると思っています。

――情報共有ツールは、どのようなものを使われているんですか?

公手 当社はMattermostというSlackライクなツールを導入しています。PostgreSQLやPHPなどのチャンネルを作っていて、最新情報の共有だけでなく、困った時にも投稿したりします。それに対して他チームの知っているメンバーが回答することで迅速に解決できることもあります。

f:id:paxigirl:20181203105303j:plain

――公手さんが、ラクスさんに入社されるまでの経歴を伺えますでしょうか。

公手 前職は大阪の制作会社のデザイン部門でグラフィックデザイナーとして、ポスターや雑誌広告、企業の社内報などを作っていました。99年頃からはWebデザインの仕事をするようになりました。

最初は静的なHTMLを作っていればよかったんですが、だんだんデータベースと連携した動的なWebサイト構築の仕事も増えてきまして、独学でPerlやPHPでのプログラミングやPostgreSQL、Linuxを覚えていきました。

ただ、お客様の要件レベルが高くなってきたので「これは、独力では無理だな」と思って。本格的に勉強しようと考えていたら、近くにITエンジニアスクールがあることを偶然知ったんです。それが、ラクスに社名変更する前の当社、「アイティブースト」でした。2001年頃のことです。

それで、代表の中村や松嶋、浅野たちと仲良くなり、「うちに来ないか」と誘われたんです。当時社員は12~13人ぐらいの小さな会社でした。それが入社の経緯ですね。

――入社して以降、ずっとラクスさん一本なんですね?

公手 そうですね、入社17年目です。まずは「メールディーラー」の開発を任され、その後「配配メール」というメール配信システムを立ち上げました。2サービスをプロジェクトマネージャーとして動かし、その後に東京に転勤しました。そこからは開発だけでなく、マーケティングも任されました。2016年に事業部制に変わり、そこからまた開発専任のマネージャーをやっています。

――いまはご自身でコードを書かなくなったとのことですが、いつ頃まで書かれていたんですか?

公手 2008年頃までですね。ラクスに入ってからは実質6年ぐらいです。

――マネジメントを任されたときは、どんな感じで業務をされていたんですか?

公手 まだ組織が小さかったので、マネージャーといえど8割ぐらいはコードを書いていました。すごくベンチャー色が強くて、特に入社して2~3年は、僕自身は仕事とプライベートの境を意識しておらず、会社に泊まり込んで開発することもありました。

夏には4日ぐらい家に帰らなくて、帰宅したらエアコンをつけっぱなしだったということもありました(笑)。ノってる時はどんどんコードを書きたくて、帰宅するのが面倒くさくなり、会社で寝て、近くのスポーツクラブで朝風呂に入りにいったり。合宿みたいで楽しかったですね。

入社して3~4年で開発者も増えて会社も大きくなり、そういう環境も良くないので、ちょっとずつ改善して残業も減らしていきました。東京にも開発チームができて、そこも見ることになり、上京しました。その頃ですね、コードを書くのをやめたのは。

エンジニアの価値観がわからないと、うまくマネジメントできない

――コードを書くのをやめたのは、ご自身で決断されたことなんですか?

公手 自分の方で切り捨てちゃいました。マーケティングも見るようになるとコードを書く余裕がなくなってしまって。転勤後すぐは頑張ってコードレビューをやっていたんですが、それだと他の業務をやる時間がなくなってしまうので諦めました。

――コードを書かれていた時期は長かったと思うのですが、葛藤はありましたか?

公手 ありましたね。エンジニアとしてダメになるのではとの不安から家で新しい技術を試したりはしていましたが、マーケティングの勉強も必要になってその時間も削られました。開発に戻ってからは技術のキャッチアップに力を入れています。今後の技術戦略を考える上で新しいことも知らないといけないので。勉強会に行ったりもしています。

――公手様のキャリアプランで、もう1回現場でコードを書く可能性はありますか?

公手 ないんじゃないですかね。定年後はわからないですけど(笑)。そっちにいくことはないですね。

――今はマネージャーとしての意識の方が大きいんですね。

公手 そうですね。今は完全に大きいです。

――エンジニアとして頑張っていた時期とマネージャーに振り切った時期、どちらの方が充実しておられますか?

公手 気楽に楽しめたのはエンジニアの頃ですね。コードを書いてプログラムを作って動かすのは、シンプルで楽しかったです。プレッシャーもそんなにないですし、自社サービスなので納期もなく、自分たちの作りたいものをこだわりを持って作ってました。

でも、今の方が何か大きなものを成し遂げる、組織で喜びを分かち合えるという醍醐味はあります。そういう意味では、今の方が充実している感はありますね。喜びの種類が違うかなと思います。

――エンジニア時代とマネージャー時代、それぞれどういう時に喜びを覚えましたか?

公手 エンジニア時代はプログラムを書くこと自体が純粋に楽しかったです。良い解決方法が見つかって難題をクリアできた時は嬉しかったですね。サービスを完成させてリリースした時よりも嬉しかったです。作る工程を純粋に楽しんでいたと思いますね。

マネージャーとしては、そういう喜びはあまりないですね。常に組織を成長させていかないといけないので、課題も次から次へと解決していかないといけない(笑)。ずっと連続している感じ。瞬間瞬間の喜びではなく、振り返ってみて組織が成長していることに達成感を感じるみたいな。もちろん年次目標は立てているので、達成できると嬉しいです。

――この連載でも、「マネージャーをしたい」という人はかなり少ないですね。

公手 うちもそれほど多くはないですね。

――エンジニアのマネジメントは、やはりエンジニアとしてかなり経験を積んだ人でないと難しいものなのでしょうか?

公手 職場によると思いますが、当社の場合はその方が望ましいですね。技術的課題の解決を含む適切なジャッジをするためには、エンジニアとしての経験があったほうが良いです。クラウドは技術の進化も早いですし、新しい技術を習得したいといったようなエンジニアの価値観がわかっていないとうまくマネジメントできないと思います。当社のマネージャーのほとんどは、20代から30代にエンジニアとしてバリバリ経験を積んできた人です。プログラマの気持ちもわかるし、マネジメントしやすいと思います。

f:id:paxigirl:20181203105342j:plain

「真の男を決めるには15ラウンドが必要だ」

――業務を行なう上で大事にしているモットーや、好きな言葉があれば教えてください。

公手 モットーは、相手視点を持つことですね。会社全体でも重要視している価値観です。相手の視点を持って仕事をするとうまい着地点が見つかるものです。メンバーにもそこを考えながら仕事をしてほしいと思いますね。社内でも、社外のお客様に対してもそうです。相手の立場や立ち位置をしっかり理解して仕事に取り組んでほしいと日々思っています。

――全くおっしゃる通りですけど、実践するのはなかなか難しいことですよね。

公手 そうですね。ただ、うちの社員は結構身についているなと思いますね。

――面接では、そういう視点を持っている人を見抜いて採用しておられますか?

公手 重要視しているポイントの一つです。

ーー好きな言葉があれば教えてください。

個人的に、自分を奮い立たせる言葉があって、それは「真の男を決めるには15ラウンドが必要だ」というものです。ボクシングのマーベラス・マービン・ハグラーという、私が高校生の頃の伝説的なチャンピオンなんですけど、1試合のラウンド数が15ラウンドから12ラウンドに変わった時に言っていたセリフのようです。

ボクシングはやっていないので想像ですが(笑)、最後の3ラウンドは一番しんどいんです。「勝つためにはここからが勝負だ」ということですね。高校生の時に聞いて以来すごく好きな言葉です。今も、しんどくなった時に「まだ12ラウンドまでしか戦ってない、あと3ラウンド戦い抜くんだ」と自分を奮い立たせています(笑)

――ご自身の成長のために日々行なっていることがあれば教えてください。

公手 本はよく読みます。特に組織論やリーダーシップ系のもの。あとは技術書ですね。有名なものは目を通します。社内のエンジニアに良書を教えてもらったりもしますね。キュレーション系のアプリで技術情報を見たり、常に最新の情報を見るようにしてます。

――読んで刺さった本はありますか?

公手 最近読んだ本だと「ティール組織」「NETFLIXの最強人事戦略」、あとは「カイゼン・ジャーニー」は面白かったですね。

――面接の際に見るポイントがあれば教えてください。

公手 まずはエンジニアとしての経験・実績です。面接の時は先ほど申し上げたような相手視点、PDCAを自分で回せるかをすごく重要視しています。過去のプロジェクトでの成功・失敗談を聞いて、どういう仮説を立て、どういう検証をしたか、深いところまで確認します。

――成し遂げて来たことはもちろんですが、失敗したことをどう次に活かせるかが大事ということですね。

公手 そうですね。成功よりも失敗の話をいろいろ聞いた方が、その人がどういう考え方をして、どういう行動をとる傾向があるか見えやすいと思います。

f:id:paxigirl:20181203105413j:plain

仲間がいないと、何も成し遂げられません

――ここからは、公手さんが働く上で大切にしていることについて、「事業内容」「仲間」「会社愛」「お金」「専門性向上」「働き方自由度」の6つの項目から合計20点になるよう、点数を振り分けていただきます。

f:id:paxigirl:20181203105438p:plain

・専門性向上 3

エンジニア時代は1つのフィールドを深堀りするよりはフルスタックな感じでやろうと思っていました。僕自身は技術者の中でのとんがり具合はあまりない方だと思います。いろんなことを知りたい。ただ、その中で1つか2つの得意分野、専門を持っているとよりいいんだろうなあと。

・仲間 5

仲間がいないと何も成し遂げられないと思うので、かなり重要です。毎日チームメンバーの1人1人に本当に助けられています。彼らがいないとサービスも作れないし、組織の改善も進まない。刺激を受けることで自己成長速度もアップします。「仲間がこれぐらいまできてると、自分もこのぐらい頑張らないといけない」とか。

・お金 3

すごく重要ですけど、状況によりますかね。私がラクスに入社した頃は結婚もしてなかったですし、お金が必要な時期でもなかった。そういう時に入れたのはラッキーでしたね。結婚してて子供がいたら、当時ベンチャーだったこの会社には入ってなかったかもしれません。

・事業内容 5

事業内容に対して情熱を持てるかどうかは大きいですね。「この事業をやることで、社会に貢献できる」と共感できるかどうか。かつ、きちんと収益が出るビジネスモデルなのかも重要です。

・働き方自由度 1

物理的な自由度はそんなに重要視していないですね。服装はカジュアルが良いですけど、昔はスーツでしたし、あんまり気にしていません。就業時間も原則9時から18時です。リモートよりも顔を突き合わせて働く方が好きですね。一方、精神的な自由度は大切。自由に考えられるか、自分の考え方が受け入れられ、承認されるか。そこはすごく重要視しています。

・会社愛 3

会社愛は結構ある方です。会社と共に成長してきたと思っているので。ただ、最初からあるものではないかな。仲間と事業内容がバシッと良い感じだと、会社愛は自然に出てくるものかなと思います。

――最後に、転職を志す方にメッセージをいただけますか?

公手 会社選びでは、事業内容や仲間がすごく重要だと思います。面接だけだとわかりにくいかもしれないので、Webサイトを見たり、Techブログで雰囲気を探ったりして共感できそうか、自分に合っていそうかきちんと調べたほうが良いですね。面接で過去の転職の失敗理由を聞いていると、そこをあまり調べなかった人が意外と多いんですよね。自分が何をやりたいのか、それは次の会社で実現できるのか、同じような価値観を持った仲間がいるのか。私自身は偶然巡り会えたからよかったんですけど。

ラクスは、「日本を代表する企業になる」ことを目指しています。日本を代表する企業というと、時価総額トップ100に入るぐらいです。われわれ開発部門はそれを支える技術組織、日本を代表するSaaSエンジニア集団にすることをビジョンとしてやっていこうと思っています。

社外のエンジニアさんから「SaaSの技術だったらラクスだよね」と認められる存在になること、そして、自社のメンバーたちが技術力で社会に貢献できていると誇りに思えるような組織になること。その2つを、これからの数年で実現したい。 エンジニアがイキイキと働けて、朝起きたら「すぐ会社に行きたい!」と思えるような場所にしたいなと思っています。

ーー本日は、お忙しい中ありがとうございました!

<了>

ライター:澤山大輔


Forkwell Portfolioは、エンジニア向けのポートフォリオサービスです。 Gitリポジトリを解析して、あなたのアウトプットをグラフィカルに可視化します。

Forkwell Portfolioのご登録はこちら!

20180925152538