Forkwell Press

エンジニアの生き様をウォッチするメディア

「浮気しているように見えようと、私はエンジニアです」後藤大輔(フリーランス)〜Forkwellエンジニア成分研究所

f:id:paxigirl:20181205163506j:plain

組織を離れて食っていけると、証明したかった

――まずは、現在の業務内容を教えてください。

後藤 いきなり一番難しい質問ですね(笑)。現在はフリーランスで、特定の会社には勤めていません。3社と仕事をしていて、やっていることはそれぞれ微妙に違います。側面支援的な仕事が多いですね。

例えばスケジュールに追われるゆえ疎かになる部分に介入したり、クライアントには見つけ出しにくい課題を見つけてアドバイスするといった、技術顧問の劣化版みたいな仕事をしています。コードも書いて、コンサル的なこともやって、物書きを手伝ったりもします。あれもこれもやるところが、特殊かなと思っています。まあ、中途半端ですね。

――これまで何社ぐらい経験されていらっしゃるのでしょうか?

後藤 サラリーマンとしては1社だけです。新卒で東京に来て、9年半くらい過ごしてフリーランスになりました。フリーになった当初は「どうやって仕事を取ろう」と思ったんですが、ブログに「仕事をくれ」と書いたら意外と反応があって。最初の仕事はブログ経由でもらいました。

転機になったのは、永和システムマネジメントさんとの仕事です。Rubyを使って業務委託系で仕事をする、当時としては日本で唯一と言っていいぐらいの会社だったと思うんですけど、当時そちらの社員だった角谷信太郎さんから声をかけていただきまして。Ruby界の第一人者が集う会社だったので、だいぶ勉強をさせていただきました。「永和システムマネジメントさんと仕事をしていた」というと、次の仕事に繋がるところがありました。非常に感謝しています。

――最初の会社では、何の言語を使ってらしたんですか?

後藤 主にC言語を使って組み込みの開発をすることが多かったですね。そのあとWebアプリが流行し、なぜかJavaも流行りだしたので、そちらも扱えるようになっていきました。Javaしかできないエンジニアが多い中、低レイヤーをCで書ける数少ない人間だったので重宝された面はあったかなと思います。

――退職される時点でフリーになるのは決めていらしたんですか?

後藤 決めてました。

――「こういうことをやろう」というのは決めていらしたんですか?

後藤 何もなかったですね。フリーランスという生き方をしてみよう、と思っただけ。ただ、フリーランスになるにはなかなかの決断が必要でした。ドラマティックな事件があったわけでなく、いろんな小さな理由が複合してのことですが。

単純に仕事がつまらなかったこともありますが、せっかく会社がくれた仕事に「つまらない」「キャリアに不利になる」などと生意気な口を叩く以上、組織を離れても食っていけることを証明しないといけないなと思って。

だから、全くのノープランです。前の会社から仕事を引き受けることもありませんでした。それどころか、12月まで待てばボーナスが出るのに、11月末日で辞める始末で(苦笑)。それぐらい当時は退職したかったし、フリーになりたかったんだと思います。その後半年で退職金を食いつぶして、「そろそろ働くか」となって今に至ります。

f:id:paxigirl:20181205163534j:plain

深海魚でさえ、多様な生き方をしてるのに。

後藤 フリーランスになったきっかけの1つとなるエピソードがあります。当時、一緒に仕事をしていた人とご飯に行ったとき、「なんで私が思う仕事の仕方をやらせてくれないんだ」と愚痴ったんですね。

そうしたら、「だってあなた、サラリーマンでしょう」って言われたんです。20代後半のいい大人で、数年経験を積んで実力もあると自負しているのに「サラリーマンだから」仕事の仕方も選べないのかと。それで、「サラリーマンをやっている限り、私は真の大人になれない」と思ったんですね。そのとき、サラリーマンではない生き方が選択肢に入ってきました。

――業務を行なう上で大事にしているモットーや好きな言葉があれば教えてください。

後藤 強いて言えば、多様性を受け入れることだなと思います。

深海魚っていますよね。深海は光が届かなくて、低温で、水圧もすごく高い過酷な環境です。栄養も酸素もほとんどありません。そんな環境なら、好きな生き方を選ぶ余裕は無いだろう、「似たような生き方に収束していくんだろう」と思いますよね。私も、暗闇だから目は退化するし、ご飯が少ないから動かない不活性な生き物が多いだろうと思ってたんですよ。

――ところが、そうでもないんですね?

後藤 そう。全然そんなことなくて。目を使わない魚はいる一方、あえて目を大きくして何が何でも周囲を見ようとする魚もいます。あまり動かず近くに漂ってきた有機物をつまむだけのもいれば、チョウチンアンコウみたいに狩りをするのもいる。究極的なところだと、ご飯を食べるのを諦めている生物もいます。

深海という究極に過酷な環境でさえみんな好き勝手生きて、うまくやっている。なのに、人類はずっと余裕がありながら、自分の思う「たった一つの冴えたやりかた」をマウンティングし合ってわざわざ生き方を狭めている。くだらないな、と思っています。

だから、仕事で成果を上げている限り、いくらか自分と考えが合わなかろうと受け入れて、「エンジニアたるものかくあるべし」などと押しつけがましく説教しないよう気をつけています。みんな子供じゃないのだし、自分の力を最大限に発揮する方法なんて当然心得ているでしょう。それは人それぞれだろうから、みんなが自分の判断で自分だけのやり方を貫くのがあるべき姿ではないですか。みんな一緒である必要はありません。

f:id:paxigirl:20181205163605j:plain

「現地でなんとかなる」ができないんです

――ご自身の成長のために日々行なっていることはありますか?

後藤 幅広く情報収集することですね。一般的にエンジニアは厳しいスケジュールの中バリバリやっているので、どうしても視野が狭くなっていくんです。視野をある程度限定して集中して物事を進めるのはみんなやってくれているわけだから、私がやる必要はない。

私がやるべきは、違う視点から問題を見ること。各自の専門からは見出しづらい、でもより簡単な解決策を外から持ち込んで、余計な負担を無くすこと。それらを実現するためには、いろいろなところから情報を仕入れないといけない。それは気をつけています。

――具体的に、どのような形で情報収集を行なっておられますか?

後藤 特別なことはしていません。古き良きRSSリーダーを活用して、注目しているエンジニアのブログや、自分や仕事先が利用しているサービスの更新案内なんかに日々目を通しています。あと、各種パッケージ管理ツールの更新コマンドを叩いて回る簡単なスクリプトを書いてまして、朝起きたらまずPCの前に座ってこのコマンドを叩き、更新されたパッケージのリリースノートを読みに行く、というのが習慣になっています。

中でも、セキュリティ情報はなるべくキャッチしています。ここでヘマして、ただでさえサラリーマンより低くなりがちな社会的信用をこれ以上落としたくはないですから。取引先の機密情報をうっかり漏らそうものなら、その損害に責任を取りきれないですしね。忙しすぎてセキュリティにまで手が回らないエンジニアはたくさんいますが、そんなみなさんを手伝えることもメリットですね。

あとは、英語から逃げないようにしているくらいですか。

――英語はどうやって学習されているんですか?

後藤 とにかく慣れだろう、ってことでひたすら英文を読んでいます。ネットがあれば無限に供給できますしね。技術情報はもちろんですが、自然科学系の読み物や小説なんかも。スピーキングは苦手ですが、仕事をする上では読み書きできればなんとかなるので。

私はあくまでエンジニアですから、エンジニアリングに関する情報を集めようと思うんですけど、英語情報が多いんですよね。避けられないことなので、覚悟を決めてやってます。

プログラムが表示するエラーメッセージも英語であることが多いですが、「英語だと無意識に読み飛ばしてしまう」という人はいくらでもいるので、そこに救いの手を差し伸べられる点でも役立っています。

――先日まで連載していた「リレーインタビュー」についてなのですが、インタビューの際に気をつけていたことや話を聞き出すコツはありますか?

後藤 気をつけていたことはたくさんあります。例えば身だしなみ。人と話す仕事だからというのもありますが、広報の方がいらっしゃる場合、よく分からないイベントTシャツにジーンズ、クロックスみたいな風体の人が来たら「大丈夫か」と疑われるのではないかと。その時のために、一張羅を用意しています。会場入りする前には入念に汗を拭き、口の中を消臭するなど、いわゆるエンジニア的イメージからかけ離れたことを、裏でちまちまやってました。

あとは、最初に軸を作ること。「この人から何を聞き出したいのか」を1本決めておく。リレーインタビューという性質上、仲の良い人につながっていくので、得意分野がかぶるんです。それで「この人が光るものはなんだろう」と事前調査で引き出し、それを中心に話を進めていきました。

アドリブが効かない人間なので、「現地でなんとかなるだろう」ができないんですね。著書があるなら取り寄せて読みますし、登壇動画があれば全て見ます。入念なリサーチをやって、最後に身だしなみを整えて臨みます。

――「よくそこまで調べてらっしゃいますね」って必ず言われていたそうですね。

後藤 全ては不安を駆逐するためです。人間が何かを恐れる理由は、無知だからです。カンペも用意しますが、必ずその人の写真を用意しててっぺんに貼ります。いつも顔を見るので、慣れるんです。ひたすら備えることですね。

――Forkwell Jobs のエンジニア向け求人で、監修時に気をつけていることはありますか?

後藤 当たり前なんですけど、わかりやすくすることですね。「読める」ではなく「頭に入る」文章を心がけること。特に求人は、小説みたいに興味を持った人がちゃんと読んでくれるものではなく、興味のあるところまで読み飛ばされるもの。なので、スルッと入れないといけないと思うんです。

そのためには、論理構成が大事だと思います。接続詞を「しかし」「ところが」と書くことによって、この次は「逆のことを言うんだな」とわかるようにする。「確かに」と書けば、「その後に反対意見が来るんだな」と理解できるわけです。人はある程度、先読みしながら読みますから。

接続詞を取っ払って箇条書き的に書いていくと、読みやすくはなるのですが、論理構造が見えないので頭に入りにくいと思います。そういう部分に付け足したり、過剰すぎたら引いたりして、論理構造を明確にすることは気をつけています。

f:id:paxigirl:20181205163637j:plain

周囲とうまくやれるかは、大事だと思います

――ここからは、後藤さんが働く上で大切にしていることについて、「事業内容」「仲間」「会社愛」「お金」「専門性向上」「働き方自由度」の6つの項目から合計20点になるよう、点数を振り分けていただきます。

f:id:paxigirl:20181205163652p:plain

・専門性向上 5

「エンジニアでいく」と10代で決めているので、そのままエンジニアで行ってくたばるつもりでいます。ただ、力の入れ具合がいろいろあるので、それは世間の言う「スーパーエンジニア」とは違う方向なのかもしれないですね。
もっとも、文章書きやインタビューを手伝ったりすることは「〇〇ができるエンジニア」に過ぎないとも思っています。エンジニアとライターが両立できることに対する需要って「エンジニアのライティング」だと思うので。楽観視はしていないですし、その状況を楽しんでいるところもあります。ただ、どう浮気しているように見えようと、私はエンジニアです。

・仲間 5

ソフトウェアってチーム開発業なんですね。中には1つの開発を丸々引き受けて、全部自分でやって納品する方もいてすごいなと思うんですけど、私は各方面のプロフェッショナルが力を合わせる方が好きです。その時に、周囲とうまくやれるかは大事ですね。仲間とうまくやっていけなくなった時に、さっと辞めて次の現場に行けるというのも(笑)フリーランスには大事だと思います。

・お金 4

自営業者はなんの保証もないので、ちゃんと稼いでおかないと。例えば、私は常にパソコンを2台持ちます。パソコンが1台止まったから仕事止まりました、なんて許されないですから。あとはバックアップも必要ですよね。データが吹っ飛んだから進捗遅れます、なんてのも許されないので。こうした当たり前の環境を整えて維持していくためにも、私には十分なお金を得る責任があります。

・事業内容 1

3社から仕事を受けていますけど、3社とも全然違うことやってます。特に興味はないですね。とはいえ「0」にしないのは、例えば犯罪に直接的に関わる仕事を受けるほど見境無いわけではないので。

・働き方自由度 5

フリーランスですしね。そもそも私がどう働けば一番力を出せるかは私にしかわかりませんから。仕事上どうしても必要なものならまだしも、そうでない宗教的信念を押し付けられるのは不快なので、そういうことを避けられるのがフリーランスを選んだ理由の1つです。業務委託で一応契約上対等な立場であれば、そういう押し付けに会いづらいですし、そうなっても簡単に離れられますから。

・会社愛 0

結局人間が好きなのであって、会社という枠そのものではないですからね。帰属意識みたいなのはないんです。もっとも、組織としての一体感から得られる力も世の中には必要でしょう。サラリーマンの皆さんがその役を買って出てくれているからこそ、私は今の生き方ができているのかもしれませんね。

――最後に、転職を志す方に向けてメッセージをいただければ幸いです。

後藤 私、転職したことないですよ(笑)。その上で言うと、「やりたいことをやればいい」ってことです。何であれやれることが増えれば、いろいろ繋がっていく。無駄にはなりません。だから、周りの意見を気にしないでやることです。一つ一つは大したことなくても、組み合わせて価値ができることってたくさんあります。

「一つを突き詰める」「たくさんのことに手を出す」、多分どちらを選んでも相手が羨ましくなるんです。自分がやりたいと思ったことをやっていくだけ。ただ、後回しにするのはナンセンス。同じ音楽でも、中学の頃に聞けば感銘を受けるかもしれないけど、大人になって聞いても「悪くないね」ぐらいで終わるんです。その時の熱意とか感触をつかめるのは、その時しかない。「今はこの仕事で勤め上げて、終わったらこれをやるんだ」とか、そんなこと言ってる暇があったら今やるべきだと思います。

<了>

ライター:澤山大輔


Forkwell Portfolioは、エンジニア向けのポートフォリオサービスです。 Gitリポジトリを解析して、あなたのアウトプットをグラフィカルに可視化します。

Forkwell Portfolioのご登録はこちら!

20180925152538