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クリエイターの“時間”を創出するディレクション アプリ開発の現場に見るエンジニアリング組織のマネージメント FOLIO 松田優貴氏

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 8月に正式版をリリース、10月にはLINEとの提携で『LINEスマート投資』のサービスを開始し、11月にはプロフェッショナルな資産運用をすべて自動でおこなえるロボアドバイザー「おまかせ投資」を開始。また、先日発表されたGoogle Playベストオブ2018日本版では隠れた名作部門賞を受賞するなど、なにかと話題のオンライン証券会社FOLIO。これらのサービスを支えているのは、エンジニアリングの力にほかなりません。

 日本の資産運用をリデザインするFOLIOのエンジニアに話を聞くこの連載の最終回は、アプリ開発のディレクターを務める松田優貴さんが登場。

 スマホファーストといわれる時代で、サービスの顔ともなり得るアプリ。ディレクターとしてチームをまとめる松田さんに、アプリ開発の裏側から、エンジニアリング組織のマネージメントまで、お話をお聞きしました。

クリエイターの“ものづくり時間”を捻出するディレクション

「主な仕事はディレクションですね」

 エンジニア、デザイナーで構成されるアプリチームをまとめる松田さんの仕事は、チームが効率よく開発に専念できるようにディレクションを行うこと。そのために、社内の関係各所とアプリチームとのコミュニケーションは松田さんが窓口となるような仕組みづくりを心がけていると言います。

「自分もエンジニアなのでよくわかるのですが、コーディングの途中で直接エンジニアにリクエストが行ってしまうと、思考が分断されたり、集中力が途切れたりする原因になるんです。クリエイターにはできるだけ“ものをつくるために”時間を使って欲しい。だから、アプリ関係の案件は一度自分のところを経由するようにしています」

 サービスの機能を集約したアプリ開発の現場には、ありとあらゆる部署から「実装依頼」や「改善依頼」が舞い込んでくる。そうした依頼に緊急度、優先度の観点から順位をつけて、何をいつまでにやるのかを整理していく。松田さんは、医療現場におけるトリアージにも似た“手当”を行うことで、エンジニアの“ものづくりための時間”を最大限確保しているのです。

「たとえば、マーケティングの部署からアプリの広告を始めたいからこのSDKを入れて欲しいという依頼があったとします。社内の部署間で横断的にこういう相談を気軽にできる環境は悪くないとは思うのですが、その話を受けたエンジニアとしては、この案件の緊急度や優先度を判断するのは難しいんですよ」

 結果としてどうなるかというと、いまやっている仕事を中断してすぐにやるのか、それとも放置してしまうのかという結果がほとんど。松田さんは、こうしたことが起こらないように案件の交通整理をするのが自分の仕事だと言います。

 ここからは、松田さんの言葉を中心に、ディレクションのこと、アプリ開発のことをさらに掘り下げていきましょう。

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貴重な時間を奪うミーティングを減らすためにやっていること

――ディレクションという交通整理をする上で徹底していることはありますか?

「経営者からの要望でも、他部署からの要望でもみなさんに『一旦僕にください』というのは徹底しています。FOLIOのサービスの特性上、コンプライアンスやセキュリティ、ユーザーに影響のあるようなことは緊急度も高く、最優先で手をつけなければいけません。一方で、優先度が高そうな依頼でも、担当者に確認してみるとそれほど急ぎではなかったということは珍しくありません。出てきた要望や案件をすべて並べた上で、緊急度と重要度に応じて優先順位をつけ、いつまでに何をやるのかを把握することで、チームのタスク管理を行っています。もう一つ、クリエイターの時間を奪っているのがミーティングですね」

――「とりあえず集まる」という無駄なミーティングは日本社会全体の問題点として挙げられていますね。ミーティングをどうすればクリエイターのものづくりの時間が確保できるのでしょう?

「私の前職でもあるヤフー株式会社では、無駄なミーティングを減らす取り組みが行われていて、そのための研修もありました。その研修で最も簡単で重要なこと、かつ忘れられることが多いのが、まずはミーティングのアジェンダを明確にして、ゴールの設定をする。これだけでかなりムダなミーティングは減らせるんです。良く言われていることですが、会議を始める際になんとなく集まるのではなく、『今日のミーティングではこれとこれを決める』『ゴールはここに設定する』と、あらかじめ決めておけば、それが決まった時点でミーティングを終えることもできます」

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――無駄なミーティングの多くは、結論が出ないままダラダラ時間だけが過ぎ、結局延長になってしまいます。ゴール設定がされていれば、「終わり」が見えるというわけですね。

「もう一つ、自分がミーティングを主催するときは、参加者にインビテーションを送る時点で、『なぜあなたに参加して欲しいか』を伝えるようにしています。ミーティングの案内をするSlackで伝える場合もありますし、口頭で伝えることもあります。こうすることで、参加者側も必要な準備をしてミーティングに臨むことができます。自分がミーティングに参加するときに一番困るのが、『今日なんで呼ばれたの?』というケースなので、そういうことなくすように心がけています」

――アジェンダとゴールの設定、参加目的を明確にすることで、たしかにミーティングの質が変わりそうです。

「1日に2回も3回もミーティングがあっては、その都度集中力が途切れ、生産性の面でも効率がよくありません。ミーティングの質が上がれば、10回やっていたものが1回で済むかもしれません。その分、クリエイティブなことに時間を使えますよね」

オフショア開発で学んだマネージメントの喜び

――前職のお話がでましたが、Yahoo! JAPANにいらっしゃったんですね。

「2009年に新卒でヤフー株式会社に入社して、エンジニアとしてYahoo!ブログのバックエンドからフロントエンドまで割となんでもやっていました。3年半くらい様々なサービスの開発に携わったあと、社内の異動制度を利用して、Androidのアプリ開発をすることになりました。ここで本格的にアプリの開発を始めたという感じですね」

――ここまではバリバリのエンジニアですよね。どんなアプリを手がけていたんですか?

「Yahoo!知恵袋だったり、もう今はクローズしてしまったんですけど CtoCのフリマアプリ『「ClooShe」(クロシェ)』の Android アプリを開発していました」

――アプリ開発とそれまでのWEBでの開発で違うところは?

「一番気を使ったのはアプリは一度配布してしまうと、僕らの意思でアプリをアップデートできないことですね。配布したアプリケーションに不具合があれば、ユーザがアップデートしてくれない限り、その不具合は残り続ける。それと、一度アンインストールされてしまうと、もう一度インストールするという確率がかなり低いのも大きな違いだと感じました。WEBであれば、検索の結果サービスに戻ってくるというパターンがあるので」

――その後、マネージメントサイドにキャリアが移行していくわけですね。

「一番大きなきっかけは、ベトナムのオフショア開発の立ち上げに関わったときの経験でした。デザイナーは日本、アプリエンジニアはベトナムという環境で、日本にいる自分がディレクションやマネージメントをして進めていくプロジェクトでした。自分でまったくコードを書いていないのにプロダクトができあがっていくのは不思議な感じでしたが、そのとき自分で直接手を動かさなくても満足感が得られることに気づいたんです。ディレクションやマネージメントでも、プロダクトができたことへの喜びが大きかった。エンジニアというバックボーンは大切にしていますし、いまでもコードは書いていますが、エンジニアとしてコードを書いていないとダメというタイプじゃないんだなということに、このとき気がつきました」

――そしてFOLIOに入社することになるわけですが。

「きっかけは元上司の誘いでした。オフショアの後も、部長業やテクニカルディレクター(部門の技術責任者)なども勤めさせて頂いたのですが、今後の自分のキャリアについて悩んでいた時、元上司に相談したのがきっかけでした。ちょうど自分のキャリアについて考えていた時期だったので、チャレンジしてみようという気持ちで入社を決めました。決め手になったのは大きく二つ。一つは、FOLIOのプロダクトです。私が資産運用に興味を持ち始めたのは数年前です。そんな中でFOLIOのような、日本の金融を変えうるプロジェクトに非常に魅力を感じ、参加したいと思いました。もう一つは、各部署にものすごく尖った何かを持った優秀な人材がたくさんいたことです。この環境に身を投じれば自分も成長できるのではないかと思ったのが大きいです」

――FOLIOではディレクションを含む、マネージメントサイドの業務を担うということはあらかじめ決まっていたんですか?

「そうですね。そういうオファーでした」

――“ものすごく尖った何かを持った人材”をディレクションしたり、マネージするのはある意味大変な面もあるのかなと思うのですが? 優秀なプレイヤーがマネージメント方面にはまったく興味、関心がないという話もよく聞きます。

「いまでも自分がうまくマネージメントできているかどうかと聞かれると正直わかりません。ただ、自走できている限りは方向性を示すだけで、上から押さえつけるような管理はいらないのかなと。みんな優秀なわけですから、方向だけ間違わなければ勝手に進んでいってくれると思っています」

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アプリは投資を生活の一部にするためのツール

――ディレクションの話が長くなってしまいましたが、アプリについて。FOLIOがサービスとしてユーザーとの接点を増やす上でアプリというのは非常に重要な役割を担うと思うのですが、意識していることはありますか?

「モバイルアプリはしばらくなくならないし、主戦場になっていくものだと思っています。だからこそ、アプリで証券サービスを体験する人がもっと増えて欲しいと思っています。そのためにはFOLIOのアプリのUI/UXはとても重要ですし、資産運用のハードルを下げるような仕掛けをもっともっとやっていかなければいけないと思っています。例えば、株式の売買に関しての説明は絶対に必要だけど、定型の長文をただ画面に出すだけではユーザーは『何これ難しい』と感じて離脱してしまうかもしれません。そこのところをデザイナーとも協力しながら、わかりやすく段階を踏んでユーザーが正しく理解できるようにするのが、アプリの役割だと思っています」

 FOLIOでは、日本の投資のハードルを下げるために、お金や投資にまつわることを楽しく学べるウェブマガジン『FOUND』のサービスも新たに立ち上げています。松田さんは将来的にはこうしたメディアサービスや証券取引を行う際のチュートリアルも含め、FOLIOのアプリを通して投資が楽しいものだと思ってもらえるという状態にするのも可能性の一つだと話します。

「お金のこと、投資のことをチェックするならまずFOLIOのアプリを開く。まったくの初心者でも、アプリを触っているうちに必要な情報が得られて、学びながら自分の資産を運用するところまでたどり着ける。はじめから知識のある人は自分の資産状況のチェックから株の売買までをアプリで完結できる。投資が生活の一部になって、FOLIOのアプリを毎日当たり前に開くというふうになれば、アプリとしても、プロダクトとしても成功したと言えるんじゃないかと思います」

 大きな話題を呼んだLINEとの提携をはじめ、FOLIOのサービスの認知、投資そのものへの興味関心は高まりつつあります。投資が生活に密着した身近なものになるためには、「資産運用は難しい」「やってはみたいけどもう少し勉強してから」という声を「これならわかりやすい」「とりあえずやってみよう」というマインドに変えていく必要があります。

 そこで重要な役割を果たすのが、いまや社会生活を営む上でのインフラとなりつつあるスマホと、その中にインストールされているアプリです。FOLIOのアプリは、投資に初めて触れる人たちとサービスをつなぐ接点として機能していかなければいけません。

 松田さんをはじめとするアプリチームの取り組みは、FOLIOが掲げる「心を弾ませ、新たな価値に気付き、人生を豊かにするワクワクを創り世界に届ける」というミッションを叶えるための第一歩になるはずです。

 この連載では、6回にわたってテーマ投資型オンライン証券サービスFOLIO を支えるエンジニアの方にお話をお聞きしてきました。諸外国に比べ、投資への関心、資産運用への士気が低いとされる日本ですが、雇用制度、社会の大きな変化で、自分の資産を自分で管理し、運用していく必要性を感じる人は、今後ますます増えていくことが予想されます。

 これからの時代を生きる人たちに新たなワクワクを届ける。FOLIOのサービスは、いままでなかったものを創出しようとするエンジニアに支えられ、これからさらに多くの人が日常的に使うプロダクトとなっていくはずです。

ライター:大塚一樹


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