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「技術に特化したエンジニアである必要はない」池上純平(gami、株式会社PLAID)~Forkwellエンジニア成分研究所

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KARTEを通じ、顧客体験の最大化を企図しています

――まず、PLAIDさんの事業内容について伺えればと思います。

池上 弊社は「データによって人の価値を最大化する」をミッションに掲げている、BtoB SaaSスタートアップです。メインの事業として、KARTEというCXプラットフォームを開発、提供しています。Webやアプリのエンドユーザーをリアルタイム解析し、ユーザーに合わせてアクションを変えていくことで、顧客体験を良くしていくためのプラットフォームです。

――どういった会社に導入されているのでしょうか?

池上 Webサイトやアプリを提供していて、ユーザー1人当たりのマーケティングコストをある程度かけられる会社さんに導入いただいています。最初はECサイトが多かったんですが、最近は人材系、金融、不動産といった様々な業界で使っていただくことが増えています。ECだとZOZOさん、人材系でビズリーチさん、不動産だとLIFULL HOME’Sさんなど。アプリの事業は2018年3月に始まったんですが、最近ではメルカリさんにも採用いただいています。意外と、大きなアプリケーションの裏で動いているんですよ。

――伺っていると、マーケティングコストがかなり下げられそうですね。

池上 コスト面はもちろん、「やりたいことが実現しやすくなる」という部分が大きいです。どんなユーザーにどういうタイミングで何のアクションをするか、という部分の細かいチューニングができる機能を自社で全部開発するのは難しいですよね。KARTEを使うと、ユーザーという軸で過去の行動データを集約し、それに合わせてアクションを出し分けができる。このサービスの自由度の高さが、大きいのかなと思います。

――それまで独自に解析して戦略を立てたことが、すべて自動化されると。

池上 そういうイメージですね。ただ、自動化の方向に寄せすぎないようにはしています。マーケターの方などが試したいことに対して、A/Bテストなどを実施し、その結果をKARTEで確認しながらPDCAを回していく。自動化というより、人の発想を拡張するようなサービスを作ろうとしています。

――池上さん自身は、どのようなお仕事をされているのですか?

池上 一番大きい仕事は、クライアントの技術的なサポートです。KARTEは機能も多くて使いこなすのに技術的な知識が必要な部分があるので、クライアントの技術的な相談に乗ったり、技術仕様の情報発信をしています。「ビジネス寄りのエンジニア」といったポジションですね。エンジニアの採用にも関わっていて、スカウトや面談に参加したり、エンジニア向けのイベントの主催などもやっています。

まとめると、社内の技術的な部分やエンジニア組織と、社外のエンジニアをつなぐような仕事ですかね。そもそも職種や場所でやることをあまり限定しない会社なので、私以外も幅広い役割を担っている人が多いイメージです。

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「自分は、学歴がないと何もない人間なんだ」

――東京大学の経済学部をご卒業されたとのことですが、在学時からプログラミングをされていたのでしょうか?

池上 大学在学中、プログラミングはほとんどしていませんでした。最初のきっかけは就活でしたね。元々は公務員志望で、東京都庁を志望してたんです。「転勤したくないしビジネスも興味ないし」というネガティブな理由でした。でも、都庁の面接では自分の学歴を言ってはいけないのですが、その最終面接で落ちてしまって。「自分は、学歴がないと何もない人間なんだ」と思い、何かトガった専門性が欲しいと考えました。

その後、大学4年のときに友人に誘われてルームシェアを始めたんですが、友人が「プログラミング勉強したいから、誰か知らないエンジニア誘って3人で住んで勉強しながら開発しよう」と言いだして(笑)。そうしてネットで人を募集して一緒に住み始めたんです。そこから、iPhoneのアプリの開発を始めました。

――どんな人が来たんですか?

池上 広告系の会社で開発をしているエンジニアさんで、シェアハウスを住み歩いているという人でした。

――その後、新卒で2015年に富士通さんに入社されています。なぜ富士通さんを選択されたのでしょう?

池上 自治体の職員がダメなら、今度は自治体のシステムを作る側に回りたいという気持ちがありました。富士通は、文系でSEを採っている会社なので。文系でも技術的なバックグラウンドを持てるのがいいな、というのもありました。

――どのようなお仕事をされたのですか?

池上 研修が終わってからは、東京23区の区役所向けのシステムのパッケージ開発をしていました。入社間もなかったこともあって、開発会社の人と一緒に実際にCOBOLでバッチ処理を書いたり、管理画面のボタンを足したり。細々とした作業をしていましたね。

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「あ、自分も辞めていいんだ」となりました。

――1年半で富士通さんを退職されたとのことですが、転職体験を反映した同人誌の『完全SIer脱出マニュアル』は、どのような経緯で執筆されたんですか?

池上 僕のSIの経験は1年という短期間で、「Excelと戦う」みたいなSIならではのつらさはあったんですが、残業が多いとかでは全然なくて。自分の中のモチベーションだけで執筆したわけではなかったんです。

直接的なきっかけは、Podcastで「しがないラジオ」を始めたことですね。「SIerのSEからWeb系エンジニアに転職したんだが楽しくて仕方がないラジオ」の略なんですけれども(笑)。同じく富士通を辞めた同期と2人で始めて、もう2年くらいやっています。収録にはゲストを呼ぶことが多いんですが、ゲストもSIerなどから転職して楽しくやっている人が多くて。その人たちからキャリアの話をしてもらい、その話をまとめたのがこの本なんです。

――SIの仕事には、やはりいろいろと厳しい部分が多いのでしょうか。

池上 SIイコール楽しくないとは思わないんですが、構造的な問題が多いと思っています。「生産性を上げようとすると、成果に繋がらない」という問題です。受託開発の場合、工数で金額を見積もることが多いと思います。その場合、例えば1年契約で1億もらえるとなったとき、「開発手法を改善して半年でできる」と提案しても、単純計算では売上が5,000万になってしまう。生産性を上げることが、評価されにくい環境なんです。

――SIだった方のお話の中で、印象に残っているエピソードはありますか?

池上 てぃーびーさんという方がお話しされていた、「7次受け」で派遣されたというエピソードですかね。もう誰にどう雇われているのか全然分からない状態で。

僕は幸いホワイトな働き方でしたが、働きづめの環境で上の人から怒鳴られ続ける環境の人もゲストの中にはいました。「仕事は辛くて当たり前」という価値観のところから転職して幸せになっている人を見ると、みんなそうなるといいなと思います。

――池上さんご自身は、転職の際どのような感覚だったんですか?

池上 すごく辛いというほどではなかったんですが、楽しくないなという感じでした。ある程度誰でもできそうな仕事という感覚があったし、年功序列の環境なので本音では生きられないなと。もちろん楽しそうに働いている人もいるんですが、僕には合わなかったです。とはいえエンジニアとしてのスキルが高いわけではなかったので、最初は特に転職することまでは考えていませんでした。

ただ、そんな中で友人に「転職サービスでスカウトされた企業に話を聞きに行くけど、一緒に来る?」と言われて一緒にベンチャー企業に行ったところ、そこの人がすごく楽しそうで。「楽しそうに仕事している人っているんだ」と思って(笑)。加えて、さっきお話ししたPodcastを一緒にやってる同期がベンチャーに転職したこともあり、「あ、自分も辞めていいんだ」となりました。

そこから技術的な勉強をしつつ、転職活動でいろんな会社を回ったり、自分を見つめ直したりしました。そうしていると「意外と自分を拾ってくれるところもありそうだ」と発見できて、今に至ります。

――業務を行なう上で大事にしているモットーや好きな言葉はありますか?

池上 うちの会社でよく言われるのが「承認より謝罪」という言葉です。承認を誰かから得るよりは、「まずやってみて、全然駄目だったら後から謝ろう」という文化があるんです。とりあえずやってみる。うちの組織にはマネージャーが明確にはいないので、小さな合意形成であれば、いい意味であいまいに行なわれるんですね。「こういうのいいと思うんですけど」ってなんとなく言って「いいね、やろう」という感じで物事が決まっていきます。個人としてリスクをとって新しいことをやる、ということは意識してやっています。

――マネージャーがいないんですね。

池上 そうですね。役職も、ざっくりというとCEO、CTO、その他大勢みたいな感じで。私の名刺に書いてある肩書は「ビジネスアーキテクト」ですが、「お客さんの前に出て行くんだったら、エンジニアよりもこっちの方が強く見えるんじゃない?」と言われてこうなっただけで、明確に役割があるわけではないんです(笑)。チームやリーダーも、数ヶ月に1度とかのスパンで頻繁に変わります。

――ご自身の成長のために、日々行なっていることはありますか?

池上 僕は何かの技術に強いわけではないんですが、エンジニア界隈での立ち位置をトガらせていくということは意識しています。今のところは、「SIerなどにいてWeb開発未経験の人をWebベンチャーに流し込むエントリーポイントを作る人」という立ち位置に自分を置いています。

具体的にはPodcastをやったりイベントを開催したり、本を書いたりといった動きをしているんですけど。いろんな要素を掛け合わせていくと、意外とポジションが空いているということは多いと思います。

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複数の業界や職種を、越境する存在でありたい

――ここからは、池上さんが働く上で大切にしていることについて、「事業内容」「仲間」「会社愛」「お金」「専門性向上」「働き方自由度」の6つの項目から合計20点になるよう、点数を振り分けていただきます。

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・専門性向上 2

ずっとコード書くよりは、いろんなことをやりたいジェネラリストタイプ、というのもあるんですけど。今の会社では、事業や目指している世界観に共感していて。空いているポジションでできることがあればやりたいし、その中で新しくできることを増やしていけたらいいなと。今はビジネスサイドと技術サイドをつなぐ役割なので、そういう意味でも複数の業界や職種を越境するような存在でありたいと思います。

・仲間 5

前職では、偉い人の言うことに納得できないまま従うことが多かったので。生産性を上げるためには「素の自分で居られる場所」にいることが大事だなと。本音を言っても受け止めてくれるような仲間、文化があるところのほうがいいなと思います。

・お金 1

正直、お金のことで悩んだり考えたりしたくないんです。そういうものから超越したところで生きていたい。逆に言うと、お金のことを考えないためには、ある程度お金が必要でもあります。理想は「価値を出そうとした仕事をした結果、お金になって返ってくる」という形ですね。

・事業内容 4

人間は今、無駄な仕事をしすぎていると思います。「これ本当に必要?」みたいな商品がいっぱいある。けれど、マーケティングの力で売れてしまう。本来、単に食べていくだけだったら、人間全体のうちの何割かの人は働かなくても暮らせるようになってないとおかしいと思うんです。本質的に、「自分が必要だと思う仕事」をやりたいなと思います。

・働き方自由度 5

大きい成果を上げるためには、リスクを取りやすい環境じゃないといけないと思います。たとえば、これまで一定の成果が出せていた働き方を思い切って全部捨てて、ガラッと変えてみるとか。うちの会社だと、いつ来てもいつ帰ってもいいし、いつリモートしてもいい、いつ休んでもいい。成果さえ出すのなら、ルール上は無限に休んでもいいんです。

「会社に来なきゃいけない」って決まっていると生産性は頭打ちですが、ある程度自由度があれば「こういう作業だとリモートがいい」となったときにリモートを試してみることができます。結果的にやり方が1つに定まるとしても、最初は自由であることが必要かなと思います。逆に言うと、自由度が高いと生産性が上がらないことへの言い訳ができない環境になるのかなと。

・会社愛 3

「会社愛に溢れています」みたいなプロモーションをしている会社は、少し引いて見てしまいます。事業内容とか文化とか仲間とかが先にあって、結果的に「いい会社だ」という評価が生まれるものだと思うので。「結果としての会社愛」だったらいいんじゃないかと思います。

――最後に、キャリアに悩んでいるエンジニアにメッセージをお願いします。

池上 二つあります。一つは、「技術に特化したエンジニアである必要はない」ということ。多くのエンジニアは「技術的に強くないとエンジニアじゃない」という強迫観念があると思っていて。もちろんそういうエンジニアは貴重なんですが、そういうエンジニアじゃなくてもいいんじゃないかと。

エンジニアも人なので、やりたいことや得意なことはそれぞれ違う。それを掛け合わせることで、独自の価値は出せると思います。僕でいうと、エンジニア的な知識は最低限持ちつつ、それを分かりやすく人に伝えたり、コミュニケーションが苦にならないという能力が高いと思っています。それらを掛け合わせると、周りにそういう人は少なくて、意外と価値を出すことができています。もし会社がそのようなキャリアを認めてくれないとすれば、無理して技術力を高めて会社に合わせるより、自分なりのエンジニア像を認めてくれる会社を探せばいいんじゃないかと思います。

もう一つは、もっとラフに「転職活動」をやっていいんじゃないかということ。転職活動をする中で、周りの働き方や自分のやりたいことを探したり、世の中と向き合うきっかけになると思うので、必ずしも「転職」を目的とせずに、まずやってみるというのはいいことだと思っています。

転職活動のハードルを高く感じている人がいたら、僕のやっているしがないラジオを聴いたり、完全SIer脱出マニュアルを読んだりしてもらえたらと思います(笑)。PLAIDでもエンジニアを絶賛募集しているので、是非興味がある方は遊びに来てください!

<了>

ライター:澤山大輔


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