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「技術に強い」と言えないとダメ。そういうプライドがあります。中城元臣(株式会社Chaintope)~Forkwellエンジニア成分研究所

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Ethereumという「ワールドコンピュータ」のR&Dを担当しています。

――Chaintopeさんはブロックチェーン技術の研究と開発を行なう会社とのことですが、中城さん自身の業務内容を教えていただけますか?

中城 私はChaintopeの中で「Ethereum」(イーサリアム)という、ビットコインとは大きく違う要素を持ったブロックチェーンを担当しています。そちらのリサーチとデベロップメント(R&D)が主な領域ですね。会社として僕に「ここを調査してくれ」という依頼は受けていなくて、かなり自由に興味ある分野に突っ込んで日々ブログを書いたり、社内向けの記事にして報告したりということをやっています。かなり自由に仕事をさせてもらっていますね。

表に出ているものとしては、地方創生をブロックチェーンを活用して実現するプロジェクトが動いています。最新のEthereumの動向とか、技術的な部分をプロジェクトにフィードバックできるよう日々キャッチアップしています。あとは、ブランド力を上げるために月1回東京に行って、コミュニティ活動に積極的に参加させてもらっています。

――Ethereumとビットコインの大きな違いは、どのあたりなのですか?

中城 概念的な話になって恐縮ですが、ビットコインは支払いのためのブロックチェーンです。二重支払いが起きないような構造になっていて、誰も管理していないものなので、その計算を皆で行なって正当性を検証しているのがビットコインなんです。「誰が幾つビットコインを持っているか」を記録する、絶対に改ざんされないものがビットコインです。

Ethereumは、ビットコインとはだいぶ毛色が違います。端的には、「ワールドコンピュータ」と呼ばれております。Ethereumは皆がノードを立て、ネットワークをビットコインと同じように組みますが、そのネットワークの中で同じプログラムを実行することが可能になっています。そしてそのプログラムを実行した結果も皆で共有します。「皆で1つのコンピュータを実行し、その結果を共有する」という仕組みがEthereumになります。

ビットコインもEthereumも中でスクリプトが実行されるのですが、ビットコインは「所有権が誰になったか」を確認するための検証スクリプトになっています。Ethereumでは「チューリング完全」と言われるのですが、現状のプログラムと同じぐらいの表現能力を持ったスクリプトが書けるようになっています。作ったプログラムもEthereum上にアップロードすることで、誰でもそれを読み出せるようになります。

さらにそのプログラムの中でステートを持てるので、そのステートも皆で共有されるようになっています。同じプログラムを実行してその結果を皆で共有しているので、ネットワークによって大きな1つのコンピュータを皆で操作しているイメージです。

――ビットコインはまだ概念がわかるのですが、Ethereumはなかなかイメージが湧きづらいですね。

中城 Ethereumでもデータはブロックチェーン上で必ず皆に公開され、全員で共有されます。そのプラットフォームの上でプログラムが書けて、いろいろな表現ができるというところが、可能性が非常に高い点ですね。いろいろな概念だったり新しいアイデアが、Ethereumの中で生まれてきているんですね。

だからビットコインとは全然違って、逆に「こういうものだ」というものがないんですけど。ただ言えるのはワールドコンピュータ、皆でたった1つのコンピュータを操作しているというものですね。

Ethereum自体の開発コミュニティは非常に先進的で、改革を推進する精神を持っています。後方の互換性はあまり気にしていないので、より良いものになるのであれば積極的に取り入れていく、そういう思想を元に頻繁にアップデートを行なっているんですね。逆に、ビットコインは安定運用を目指しています。

――通貨のシステムなので、急に大きく変わると問題が起こると。

中城 そういうことですね。ブロックチェーンにおいて、古いバージョンだと動かせないようになるような変更を加えることを「ハードフォーク」と呼ぶのですが、ビットコインではみんなの合意が得られてはじめてハードフォークが実行されます。Ethereumの場合は開発コミュニティーが先導してハードフォークを計画し実行しています。そのためEthereumでは新しいアップデートを積極的に組み込んで行けるようになっています。

Ethereumは大きく変わることがあるので、Ethereumの上でいろいろテストをして「これは動くな」というものが見つかると別のブロックチェーンを作ったり、もう少し安定しているNEM、EOSなどの新しいブロックチェーンでサービスとして動かすとか、そういう動きになるんじゃないかなと思っています。

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少女漫画から、プログラマーに興味を持つように

――ご出身は、九州工業大なんですね。

中城 もともと出身が大分なんですけど、中学あたりから「プログラマーになりたい」という夢を持っていました。最初は高校を出たら情報専門高校に進もうと考えていたんですが、親に相談したら「大学を出てから専門性のある職業に就いた方が良い」というアドバイスを受けたので、九工大を選びました。九大という選択もあったんですが私は英語が苦手でしたし、近場だったこともありまして(笑)。

――プログラマーを目指されたきっかけは何かありましたか?

中城 きっかけは漫画ですね。SFじゃなくて少女漫画なんです。「赤ちゃんと僕」という少女漫画があって、その主人公が小学生なんですけど、お父さんがシステムエンジニアかプログラマーという肩書きで。

僕らはファミコン世代なので「ゲームを作る人になりたい」と思っていたですが、そこでプログラマーという職業を知って。ゲームはゲームを作るだけですが、プログラマーならもっといろいろなシステムを作れる。その方が面白そうだなと思ったので、プログラマーを選びました。

――九工大では、どんなことを学ばれたんですか?

中城 実は、九工大は中退したんです。弊社の社長である正田英樹が、僕と入れ違いに卒業して、僕が2年のときにベンチャーを立てて。彼とはサークル活動で元々知り合いだったんですね。結局、中退してそこに就職しました。

中退したのは、大学1年、2年ではガッツリプログラミングを学ぶわけではないからですね。自分はすでにプログラマーになろうと思っているのに、情報工学部はもともと工学部から分かれて新設されたばかりだったこともあり、他の工学の勉強もしなきゃいけなくて。

そのときに正田がハウインターナショナルを起業するという話になったので、「バイト代も要らない、勉強させてほしい。便所掃除でもいい」と頼み込んでアルバイトをさせてもらいました。そこから現場に入ったので、だんだん「別に卒業しなくてもいいか」と思って。ヘンにダラダラ続けるより仕事に集中したい、と思ってすっぱり大学を辞めました。

――それから、Chaintopeに転籍したとはいえハウインターナショナルさん一筋なんですね。

中城 そうですね。幸いなことに、これまでクビにならずにやってこれています。

――10数年間、転職のチャンスがあっても動かなかったってことなんですよね? 動きの激しい業界において、貴社の皆さんのキャリア形成は希少ですね。

中城 そうですね。自分の場合は持病を持っていることもあり、最近は元気になったんですけど、少し前まで入退院を繰り返していて。普通の会社では働けない身体なので、正田には恩があります。学生時代から今まで、お世話になりっぱなしなんですね。そういう恩をしっかり返さないといけないので、転職は考えていません。

「五体満足で生まれたなら、できないことはない」

――業務を行なう上で大事にしているモットーや、好きな言葉があれば教えてください。

中城 「やってやれないことはない」ですね。おばあちゃんの言葉です。祖母は戦後あたりの世代で、僕は1979年生まれですがおばあちゃん子で。小さい頃からかわいがってもらいました。

おばあちゃんは戦後にスナックを開いて、戦後の一文無しで一代を築いた肝っ玉母さんです。その人から「やってやれないことはない」「五体満足で生まれたんなら、上手下手はあってもできないことはないんだ」と聞くと、そうだよなと思って。うだうだ言わずに、まずやるべきだなと。今も、それを実践しています。

特にソフトウェアの業界では、とりあえず作って壊すということが簡単にできるので。コンピューターの中で全てが完結するので。プログラムを書くのに「自分の時間」以外の材料費もいらないですから、本当に「やってやれないことはない」んです。思いついたら試すとか、調べて試すというのはどんどんやっています。

――ご自身の成長のために日々行なっていることがあれば教えてください。

中城 自分の「これをやりたい」という気持ちには、素直にいようとしています。自分は好奇心旺盛なので、新しいことを発見したらすぐに手をつけたくなります。ゲームも大好きなので新作が出ればやりたくなる。やりたい事だらけです。

でも、「本当にやりたいこと」は順番がついてるはずです。遊んでる最中に先週末に積み残したタスクが気になって集中できないとか、そういう時間の使い方はもったいない。本当に一番やりたいことを、ちゃんとやる。それが、濃密な時間を生むのかなと考えてます。

「ここは他人には負けない」という気概を持つのが大切です

――ここからは、中城さんが働く上で大切にしていることについて、「事業内容」「仲間」「会社愛」「お金」「専門性向上」「働き方自由度」の6つの項目から合計20点になるよう、点数を振り分けていただきます。

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・専門性向上 5

自分は技術者なので、「技術に強い」と言えないとダメかなというプライドがあります。自分しかできない、というレベルの専門性を持つのは難しいんですけど、「ここの分野は好きだし十分研究している」「ここは他人には負けない」という気概を持つのは大切かなと。そういうこだわりが、エンジニアをエンジニアたらしめているのかなと思いますね。

・仲間 5

ブロックチェーンをやりだして意識するようになったんですが、仲間というのは必ずしも近くだけでなく、ネット上で同じような研究をされていたり、Twitterでコミュニケーションをとっている方々でもあります。仲間がいる方が切磋琢磨できて、モチベーションが高く保てることを感じています。自分に関わる部分で参考になる資料をまとめてもらえたりするので、自分も恩返しできるように研究を進めていきたいと思います。そういう意味で、仲間はすごく大事です。

・お金 3

お金の多寡で就職先を決めることはないんですけど、食っていける分はもらわないといけないですし。あと、もらえるものはもらいたい(笑)ので、中間で3かなと思いました。

・事業内容 2

自分は「ブロックチェーンをやってね」と言われてやりだしたんですけど、突っ込んで研究していたらそれ以降は周りから特に何も言われず、やりたいことをやれる状況になってきました。「今これをやりたい」と思うことは主張して、しっかり突っ込んで結果を出せばそういう環境はついてくると思います。そういう意味で、こだわりはありません。

・働き方自由度 2

周りから認められる結果と能力さえ持っていれば、生きていけると思うんです。だから、特に働き方は気にしません。あとは、自分は「自由じゃないと嫌だ」とか考えたことがなくて。9時から18時出勤でも特に不満を持ったことはないですし、そういうことでモチベーションは上下しないですね。

・会社愛 3

自分は創業からいるメンバーなので、そういう意味で会社愛はあるっちゃあるんですけど。潰れそうな時期も経験しましたが、会社に関しては「潰れるなら潰れればいいか」ぐらいのスタンスです。またイチからやり直せばいい。どっちつかずだなと思うので、3ですね。会社というよりも、そこにいる人たちに心を寄せているのかなと思います。

――キャリアに迷うエンジニアに向けてメッセージをお願いします。

中城 エンジニアは、持っているエンジニアリング能力が全てだと思います。それを他の人が見てもわかるような形でアウトプットするのが、大事かなと思っています。自分という人間のポートフォリオを作る意識で、ブログを書いても良いんじゃないかなと思います。

ブロックチェーン業界で働いてて思うのは、この界隈は独立している人も多くて、会社を移っている人も非常に多いです。最先端を走っているメンバーは会社どうこうを気にしなくて、何ができるかを気にしています。個人・自分というアイデンティティを世の中に出していくように活動したほうが、いずれやりたいことが見つかった時に有利になると思います。

<了>

ライター:澤山大輔

jobs.forkwell.com


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