音楽畑から一転、機械学習エンジニアに
――まずは石川さんが、現在電通デジタルでどういったお仕事をされているかを教えてください。
石川 現在はAIクリエーティブ開発グループという部署に所属し、電通と一緒に「ADVANCED CREATIVE MAKER(アドバンストクリエーティブメーカー)」というバナーの自動生成に携わっています。バナーの絵力だけでどれだけクリックを予測できるか、AIを使って検証しています。過去に作られた数万枚のバナーデータから新しいクリック率の予測モデルを作る仕事ですね。
ほかには、デザイナーの感性を、AIを使ってモデル化できないかという機能開発も行なっています。時期は何とも言えないんですけど、才能のある人間にしか出せない感性というものをAIが作れるようになったら面白いなと思って。
――なるほど。将来的に、デザイナーとクリエーターをAIが食ってしまうこともあり得るでしょうか。
石川 そこは、現状ではないかと思います。将来的にはわからないですけど。僕はデザインに関しては素人なので、いいバナーと悪いバナーの違いってわからないんですね。でも、人の感性って数字に置き換えられないですよね。だから人の感性を持ったAIを作るのってものすごく難しいんですよ。それでもいろんな技術を駆使してAIに学習させて、デザイナーがいいと思うバナーだけをピックアップしてもらったりできるようになりました。8割くらい正解するAIは作れてきています。
――聞けば聞くほど、「最前線」のお仕事ですね。
石川 そうですね。そういうものがやりたいなと、思っていたので。
――前の会社にいらしたときから、こういうのやりたいなと思って?
石川 いや、僕はもともと音大出身なんです。最初はアーティストをやっていました。
――なんと。音大では何を専攻されてたんですか?
石川 ギターをやってました。めちゃめちゃがんばってエレキギターやってたんですけど、同級生でいま非常に有名になったバンドがいて。こないだもライブ会場に行って、今でもどんちゃん騒ぎしたくらい仲がいいです。彼らは当時からめちゃめちゃうまかったです。
で、アーティストを辞めたあとはレコード会社でアーティストマネージャーをやっていたんです。ずっと音楽畑で育ってきたんですけど、囲碁のAIのAlphaGoを見たときに、衝撃を受けて。
「人間がやってきたことを、AIがこなす時代が本当に来る」と感じました。世の中の最前線のところでクリエーティブを作れる会社に行きたいと思って、電通デジタルに就職しました。
――驚きました、全くの異業種転職なんですね。
石川 そうなんです。モノづくりをしたい、楽しいことをしたいって昔からずっと思っていたので。今の会社が掲げている「デジタルを使ってワクワクする社会を作ろう」っていうところは一致したので、僕としても(転職できて)よかったなと思ってます。
在学時からKaggleにも出品していました
――電通デジタルに入社する前、AIを学ぶためにDIVE INTO CODEの機械学習エンジニアコースに入学されました。こちらを選ばれたきっかけは何でしょうか?
石川 最初は独学でAIをやろうと思ってたんですが、どうしても数式のところで詰まってしまって。数式から含めてAIをちゃんと教えてくれる学校はどこか探してる中で、大学と同じようなレベルのことを教えてくれる学校がDIVE INTO CODEしかその時はなかったんです。
――ということは、機械学習エンジニアコースを申し込んだ時点で、かなりの知見は持ってらしたんですね?
石川 いや、全くそれはなくて。数学も2の3乗もわかりません、っていう状態だったんですよ。相当勉強しないと追いつけないだろうなと思ってたんで、数学は死ぬほど勉強しましたね。
――2018年7月入学ということですが、通っていたのは大体どのくらいだったんですか?
石川 缶詰で勉強してたのは、実質4か月くらいですかね。入学の1か月くらい前から勉強していて、電通デジタルに入社する直前の昨年の10月末まで通っていました。今でも土日は通って教えたり勉強したりしています。
――通ってらした頃は、1日どういう感じのスケジュールだったんですか?
石川 朝10時に学校に行って、終わるのは夜10時ですね。12時間みっちりAIの勉強をする感じでした。それから帰っていろいろ勉強していたんで、15時間くらいは勉強はしてたかな。
――すごい勉強量ですね……機械学習エンジニアコースは、入るときに試験があるんですよね?
石川 そうですね、数学とコーディング試験はありましたね。ただ数学といってもPythonの関数で解ける問題でした。
――AIやディープラーニングの勉強の上では、大学卒業レベルの数学が必要だと伺っています。
石川 そうですね、大学数学のレベルの知識はやっぱり必要ですね。特にDIVE INTO CODEはすごく細かいところまで教えてくれるので、本当に入学して良かったなと。
――学習されたものが、今のお仕事の現場でも活かせたりしますか?
石川 ありますね。僕は在学してた時から「Kaggle」というAIの世界大会のコンペに出て入賞したりしていたので。在学中にやったことプラス、コンペで海外の方とディスカッションしたりして。そこで得た細かい知識やテクニックは、今の仕事でも活かせています。
――今後、どんなエンジニアを目指してらっしゃいますか?
石川 クリエーティブの世界に携わりたいという思いが強くあります。AIが単にできる人になるっていうよりは、AIを使って面白いアイディアを出して行く、世の中がいい意味でざわつくようなAIエンジニア、兼プランナーみたいなところに立てたらいいなと思っています。
根気と楽しむ気持ちがあれば乗り切れる
――では、Forkwell Portfolioのリポジトリ解析結果を伺えれば。上位63.9パーセントなので、今は「駆け出しのPythonエンジニア」という評価です。
石川 エンジニアで自分がどれだけ書けたということを気にしてる人は少ないと思うので、そういう視点からアプローチされているのは面白いと思いました。
――去年から始めて上位63%、これはかなり高い数字だと思います。
石川 そうですね、ただ僕リポジトリにあげていないのがこの10倍ぐらいあります。
――すごい。全部あげたら「神」とかの評価になるかもしれませんね(笑)。今後伸ばしていきたい領域はありますか?
石川 フォークされた数とかがあったらいいなって思いましたね。どれだけ面白いアイディアがあるか、どれだけコードを真似されてるかってわかるので。それが見れたら新しい指標になりそうだなと思いました。あと、3か月で1万行ですか。それだけ書けてたら、自分の中ではまあ及第点かなと。
――プランナー的な立ち位置もお考えとのことでしたが、技術者として突き詰めるより、そちらの軸もお考えでいらっしゃいますか?
石川 技術者として、技術を落とすのは僕のポリシー的に嫌なので。どこの会社にいっても通用するエンジニアでありつつ、もう一歩上の仕事をやりたい思いはあります。結構、「AIって何ができるの」ってよく聞かれるんですよね。
深層学習ってまだまだ、ビジネスになってる部分が少なかったりしますからね。本当にアイディア勝負で、新しいコンテンツが生まれてくると思うので。AIを作る技術もないとそこにいけないと思いますし、当社もクリエーターがたくさんいるので。そういう人たちと力をあわせて、時代がざわつくようなものを作りたいと思います。
――これからエンジニアを目指す人に向けてメッセージをいただけますでしょうか。
石川 そうですね。AIエンジニアって他のプログラマーより覚えることが多くて、数式をがっつり理解するタイミングなど、挫折するポイントが他のエンジニアよりも多いと思うんですね。勉強しててもついていけない方とかもいらっしゃるくらい、難しい世界ではあります。
しかも、異常に技術の発展が早いので、僕も海外の論文を毎日5本ずつ読むようにしています。それでも、全然追いつけなかったりするくらい論文がバンバン出てくるんです。それを読んで自分で実装して、を繰り返さないとすぐ置いて行かれちゃうので。根気と楽しむ思いがあれば乗り切れると思うので、ぜひ頑張ってください!
――まさに最前線で格闘してらっしゃる方にしか伺えない話ですね。ありがとうございました!
<了>
ライター:澤山大輔
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